QDT Vol.49/2024 March page 0263 まず、支台歯形成の基本的コンセプトについて述べていきたい。支台歯形成を行い、補綴装置を装着した後にどのような生物学的反応を期待するのか、そこを意識する必要がある。 クラウンを維持するための3つの条件を表1に示す。ここには支台歯形態のデザイン、補綴装置の適合、および装着用材料(セメント)の選択、が挙げられている。また、補綴装置装着後の歯周組織の健康に影響をもたらす因子について表2に示す。これには患者自身のセルフケア、支台歯形態、そしてプロビジョナルレストレーションの適合が含まれる。これらの条件が揃ってはじめて、歯周組織と調和した機能・審美を満たす補綴治療が完成される。 さらに、支台歯形成自体に求められる3つの要素について表3に示す。これはすなわち、歯髄を温存すること、歯周組織を侵害しないこと、そして構造力学的に妥当であることの3点である。生物学的支台歯形成の基本とMI時代に適応した各種器材の応用(前編:マイクロスコープ&ピエゾ装置編)□支台歯形態のデザイン□補綴装置の適合□装着用材料(セメント)の選択 補綴治療に携わるにあたり、フィニッシュラインの深度はかねてから議論を呼んできたところであるが、すべては生物学的幅径(Biologic width、あるいはSupracrestal tissue attchment)への理解からはじまる。歯肉辺縁から骨頂までが3mm、セメント-エナメル境から骨頂までは2mmであるとするこの法則は、歯槽骨頂から歯肉溝底部までの歯肉の付着幅を示す(図1)。 生物学的幅径については、天然歯とインプラントの場合を対比すると理解しやすいため、図2に示す。両者の間には結合組織の量と線維の走行に差があり、これが組織抵抗性の優劣を生むとされている。 この生物学的幅径を侵害した場合、どのようなことが生じるのであろうか。その例を図3に示す。本図には装着後13年が経過した前歯部クラウンを示すが、1人の患者に対して1人の歯科技工士がクラウンを製作し、同じプラークコントロールが行われたにもかかわらず、上顎左側中切歯には異常がみられないのに対表1 クラウンを維持するための3つの条件を示す。表3 支台歯形成自体に求められる3つの要素を示す。表2 歯周組織の健康に影響をもたらす3つの因子を示す。□患者自身のセルフケア□支台歯形態のデザイン□プロビジョナルレストレーションの適合□歯髄の温存□歯周組織を侵害しない□構造力学的に妥当である191.支台歯形成の基本的コンセプト■クラウンを維持するための3つの条件■支台歯形成自体に求められる3つの要素■歯周組織の健康に影響をもたらす3つの因子1)支台歯形成に求められる基本的な条件2)すべては生物学的幅径への理解からはじまる
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