QDT Vol.49/2024 April page 043060 義歯を装着した患者に生じる問題に「(ケリーの)コンビネーションシンドローム」と呼ばれるものがある。これは、上顎無歯顎に総義歯が、下顎両側遊離端欠損に部分床義歯が、それぞれ装着された症例に生じる5つの問題を示す語である。5つの問題とは、①上顎口蓋部の過角化、②上顎結節の線維組織の増加、③上顎前歯部顎堤の炎症、④残存下顎前歯の挺出、⑤下顎部分床義歯遊離端部の骨吸収であり、KellyEが1972年にTheJournalofProstheticDentistryに発表した論文によって定義された(クインテッセンス出版Webサイト「QuintDentalGate」より)。 読者諸氏の中でもコンビネーションシンドロームの症連載予定第1回 キャストパーシャルデンチャー製作のためのトレー第2回 キャストパーシャルデンチャーの材料と適合第3回 メタルプレートの適合精度を上げる手法第4回 コンビネーションシンドロームを防ぐ義歯治療(前編)第5回 コンビネーションシンドロームを防ぐ義歯治療(中編)第6回 コンビネーションシンドロームを防ぐ義歯治療(後編)例を経験された方は多いと思う。そしておそらくは、咬合採得が困難なために人工歯排列のやり直しを余儀なくされたり、上顎前歯部へのフラビーガムの促進を防ぐ目的で前歯部排列時にオーバージェットを多くとったため口腔内で義歯が不安定になってしまったり等、いろいろと難儀をされたのではないだろうか。筆者も何度かそのような経験をしており、義歯製作が難しいパターンの一つであると感じている。 そこで今回から、コンビネーションシンドロームを防ぐための義歯製作の流れについてご紹介したいと思う。─トレー製作から蝋堤製作まで──咬合採得から人工歯排列・試適まで──最終排列から完成まで─山田秀典 Hidenori Yamada*1監修:松本勝利 Katsutoshi Matsumoto*2*1 歯科技工士:GDS認定技工士、あらかい歯科医院*2 歯科医師:GDS代表、あらかい歯科医院福島県南会津郡南会津町関本字下休場729-1連載第4回 コンビネーションシンドロームを防ぐ義歯治療(前編)─トレー製作から蝋堤製作まで─精度の高いキャストパーシャルデンチャー製作法
元のページ ../index.html#4