連載 QDT Beginners Manual for Dentist 歯肉圧排井上 謙Ken Inoue 補綴治療においてlongevityを得るためには、補綴術式の各ステップの一つ一つを正確・丁寧に行うことが重要であることは論をまたない。審美的理由から支台歯形成のフィニッシュライン(形成限界)を歯肉縁下に求める場合、歯肉内縁上皮を傷つけることなく歯肉縁下の仕上げ形成を行うには、適切な歯肉圧排操作が求められる。 歯肉縁下形成を行う場合、製作する補綴装置に適切なエマージェンスプロファイル(歯肉縁下からの立ち上がりの形態)を付与するためには、この歯肉縁下に設定された「フィニッシュラインの印象」に加え、「フィニッシュラインより根尖側約1mmの印象」を明瞭に採得することが、特に重要となる。これらの明瞭な印象を得るためには正しい歯肉圧排法を身につける必要がある。歯肉圧排が必要な主な2つの臨床的局面①歯肉縁下のフィニッシュラインの仕上げ形成を行うとき。②歯肉縁下の印象採得を行うとき。 歯肉圧排法は主に「歯肉縁下の形成を行う際」と「歯肉縁下の印象を採得する際」の主に2つの臨床的局面で必須となる補綴基本手技であり、これをマスターすることによりさまざまな臨床的局面への応用が可能となる。 デジタルデンティストリーの発展とともに、口腔内スキャナーの普及・進化のスピードは増すものと思われるが、歯肉圧排は今後も残っていく手技であり、歯科医師としてぜひとも早期に習得しておきたい基本技術である。 本連載では、この補綴の基本的手技であるのにもかかわらず、詳しく解説されることの少なかった「歯肉圧排」にフォーカスを当てて解説していく。第1、2回では上顎中切歯の歯肉圧排を、第3、4回では上顎第一大臼歯の歯肉圧排を例に挙げ、順に詳述していく。歯科医師:I DENTAL CLINIC岡山県岡山市北区東中央町1-15-1F76QDT Vol.49/2024 May page 0568第1回 上顎中切歯の歯肉圧排(前編)~歯肉縁下形成のための歯肉圧排~はじめに連載QDT Beginners Manual for Dentist今回のポイント歯肉圧排
元のページ ../index.html#7