ab*「真実」そのものを必要としていないのです:Geller氏が言いたいのは、天然歯を模倣することは大切であるが、必ずしも解剖学的に完璧な模倣をすることが重要なのではなく、補綴装置を口腔内に装着した際に天然歯に見えるような表現をすることが重要であるという意味だと思われる(小田中)QDT Vol.49/2024 October page 114583図1a、b 1973年、Willi Geller氏がVITA社の陶材を調合してオペーカスデンティンを考案し、発売されることとなった。Geller氏と山本氏の対談1より(一部抜粋・改変) VITA Zahnfabrik(以下、VITA社)は、オーストリアからスイスにやってきた若き歯科技工士であるWilli Geller氏に注目し、後にGeller氏はVITA社のアドバイザーを務めることになった。そして1973年、Geller氏はVITA社の陶材を調合し、オペーカスデンティンを開発する。その後、オペーカスデンティンはさまざまなメーカーの陶材にラインナップされ、現在ではなくてはならない陶材となっている(図1)。 このオペーカスデンティンについて、Geller氏と山本 眞氏が本誌1984年12月号の「トップセラミスト対談─ポーセレン・テクニックの真髄を語る─」1の中で興味深い話をしている。なお、以下は原文とは異なり、筆者の解釈で一部抜粋・改変したものである。Geller:オペーカスデンティンは決して特殊な陶材ではありません。わたしはこの陶材をすべての人が使えるように、従来から存在した陶材に、私の考え、そして手法をミックスして作り出しました。 通常、メタルセラミッククラウンではメタルコーピングの下地処理としてオペークを使用しますが、この際、マージン辺縁部と歯間下部鼓形空隙部の歯肉に影ができるという問題が起きます。これは、オペークまで届いた光が反射することが原因です。光の透過と反射は、お互いに影響し合い、影を作り出します。 そこで、この光の反射をどうしても止めたくてオペーカスデンティンを考えました。オペーカスデンティンは、オペークまでの光の透過をほぼ阻止します。もし微量の光がオペークに届いてしまったとしても、それは反射で影ができる強さではありません。光は入射した強さと同じ強さで反射するからです。 歯間乳頭部にコネクターが存在するメタルセラミックブリッジでは、この問題が顕著になります。私自身も第4回 オペーカスデンティンと、シェードガイドの明度こういったケースの処理には困っていますが、ただ、私はこの問題についての解答を得ているような気もしています。すなわち、私たちはこの領域の再現に、「真実」そのものを必要としていないのです*。これはポンティックや臼歯部にも言えることです。山本:オペーカスデンティンシステムは、特殊色のホワイトをベースとした不透明材に着色を加えたものだと思われますが、ホワイトがベースであるということが重要な点だと思います。 桑田正博氏のように、オペークを混合して使わずにホワイトを混ぜているのはなぜでしょうか?Geller:オペークの粒子はあまりにも大きすぎるというのが理由です。山本:私もGeller氏と同じように、ホワイトをさまざまな目的で多用します。そしてこのホワイトを用いる際に大切なポイントだと思うのは、トランスルーセント(半透明)をいかに活かすか、つまり歯に現れる(不透明性も含んだ)白をいかに使うかだと思っています。Willi Geller氏によるオペーカスデンティンの開発
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