ザ・クインテッセンス3月
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43特 別 寄 稿科学的根科学的根拠に基づいた切開・縫合のArt&Science~ハーバード大学大学院歯周病科より~ハーバード大学歯科医学部歯周病学講座連絡先:188 Longwood Ave, Boston, MA 02115, USAThe Art and Science of Incision Design and Suturing based on RationalKasumi Kuse Barouch久世香澄キーワード:切開,縫合,歯周外科,創傷治癒,科学的根拠歯周外科は日々進歩している! 歯周疾患治療の1つのカテゴリーである歯周外科は,昨今のサイエンスの発達によりますます進歩している.実験機材の驚くほど速い進歩とテクノロジーの向上が今まで不可能と思われてきた研究を可能にし,日々新たな認識をもたらしている. かつては,「1人の患者に行った術式が良い結果を示した場合,その術式は他の患者にも良い」という考えもあった.しかしながら,多くのことが細胞を構成する分子レベルでわかりはじめ,“ある術式がすべての患者にあてはまる”という考えは,もうすでに過去のものとなっている.歯周疾患をもつ同じ患者でも,口腔内の部位によって同じ術式の歯周外科が適応とは限らず,経時的変化も異なる.まして,歯周疾患の病態は刻々と異なる症状を呈し,全身のコンディションや生活習慣と関連して変化していくわけである. われわれが日常臨床で肉眼で観察できることは限られている.つまり,“見ているようで見ていないこと”がたくさん存在している.そこでわれわれは,「今わかっている科学的認識に基づき,正しい処置を患者に提供する」という究極の目的を果さなければならないのである. 本稿では,ハーバード大学大学院歯周病科にて研究,教育,臨床を行っている立場から,いくつかの歯周外科のケースを供覧し,われわれがレジデント(専門医養成プログラムの研修医)たちに教えている術式のなかのエッセンスを先生方にわかりやすく解説したいと思う.the Quintessence. Vol.31 No.3/2012̶0523
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