ザ・クインテッセンス3月
7/8
吹譯景子 Keiko Fukiwake九州大学大学院歯学研究院口腔病理学教室・特別研究員連絡先:〒812‐8582 福岡県福岡市東区馬出3‐1‐1吹譯景九州大学連絡先:イラストで学ぶ第2回 炎症ってどういうこと?急性炎症のメカニズムを知ろうエンドのバイオロジーエンドのバイオロジーキーワード: 急性炎症のメカニズム,炎症の5徴,血管反応,滲出液136炎症ってどういうこと? 今回のテーマは「炎症」です.エンド病変とはご存じのとおり,歯髄の炎症,そしてそれに継発された根尖部歯周組織の炎症のことを指します.臨床において,痛みや腫れがある場合には,「ここに炎症がありますから治療しましょう」とお話すれば,患者さんも納得し,同意してもらえるでしょう.しかし何の症状もなかったのに,治療したことによって痛みなどが誘発された時には,患者さんとの信頼関係は崩れることさえあります.・今どういう状態で,何が起こっているのか・いつ治療に着手するべきなのか・病態は治癒傾向にあるのかどうか 患者さんに理解してもらえるような説明をするためにも,生体からのサインを読み取るためにも,まず炎症のメカニズムを知ることは大きな助けになると思います.炎症とは「有害な刺激を除去・軽減し,障害された部位を修復しようとする一連の生体防御反応」と定義されています.炎症は本来,決して悪ではなく,体を守るための大切な味方なのです. 組織が何らかの有害刺激を受けると,一般的にはまず急性炎症が起こり,生体は応戦しようとして奮闘します.減弱されながらも,そのまま刺激が残存すれば,炎症は持続し慢性化していきますが,免疫力が落ちているときなどは,慢性化していたものが再び急性転化(フレアーアップ)してしまうこともあります.しかし最終的には,きちんと原因が除去されれば,組織は治癒(再生・修復)へと向かうのです(図1).ここで大切なのは,急な応戦から免疫反応,創傷治癒までを含めた生体反応すべてが,「炎症」の一連の過程であるということです.•細菌学的原因•化学的原因•物理的原因•免疫反応再生修復治癒原因除去原因除去急性炎症初期急性炎症後期慢性炎症急性転化(フレアーアップ)図1 炎症の過程図1炎症の過程keypoint:「炎症とは一連の生体防御反応」であるthe Quintessence. Vol.31 No.3/2012̶0616
元のページ