ザ・クインテッセンス7月
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特集3義歯使用の高齢者に不足しがちな栄養素は?健康寿命ってどういうこと?メタボと歯科の関係は?サルコペニアって何だ???岩佐康行/渡邊 裕*/古屋純一**原土井病院*国立長寿医療研究センター口腔疾患研究部口腔感染制御研究室**岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座代表連絡先:〒813‐8588 福岡県福岡市東区青葉6‐40‐8“噛めたら終わり”から健康長寿のサポートへキーワード:食事指導,栄養,歯周病,高齢者,メタボリックシンドローム,サルコペニアLet's Start A Meal Guidance After Prosthodontic Treatment for Patients' Healthy Long Life義歯の後は“食事指導!”Yasuyuki Iwasa/Yutaka Watanabe/Junichi Furuyaはじめに 超高齢社会を迎え,医療に求められるものが変化している.2011年の簡易生命表によれば,日本人の平均寿命は男性が79.44歳,女性が85.90歳であり,日本は世界有数の長寿国である.一方で,健康寿命(2010年)は男性で70.42歳,女性で73.62歳となっており,平均寿命との差が大きい.そこで,たんに平均寿命を延ばすのではなく,健康寿命を延ばすことが重視されるようになった.高齢者において,十分な咀嚼能力を有することは健康寿命の延伸に貢献すると考えられている.その機序は明らかではないが,よく噛める者は多くの種類の食品を摂ることができ,その結果,吸収できた栄養素も豊富な種類を含んでいるためとする考えがある. 平成23年度国民健康・栄養調査では,70歳以上の84.4%は「何でも噛んで食べることができる」と回答しており,歯科医療者にとって喜ばしい結果であった.しかしながら,実際に患者が何でも噛めているのか,多様な食品を摂取しているのかということについて,われわれはどれだけ把握できているであろうか.近年の調査では,高齢者では,残存歯が少なくなると野菜や果物の摂取が減り,米,菓子類や高カロリー,高脂肪の食事が増えて太るとの報告が多い.肥満(メタボリックシンドローム)は心疾患,脳血管疾患,がんなどと関係が深いだけでなく,歯周病との関連も指摘されている.一方,虚弱な高齢者はたんぱくの摂取が少なく,低栄養に陥りやすいとの報告がある.運動量の低下と低栄養はサルコペニアを進行させ,さらなるADLの低下を招く悪循環に陥ることとなる. これからのファミリーデンティストは,患者が義歯で噛めるかどうかだけではなく,実際にどのように食べているかを把握し,それぞれに応じた食事指導を行えることが望ましい.本稿が,そのための参考となれば幸いである.134the Quintessence. Vol.32 No.7/2013—1506

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