ザ・クインテッセンス7月
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鶴見大学歯学部保存修復学講座連絡先:〒230‐8501 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2‐1‐3*日本歯科大学生命歯学部接着歯科学講座連絡先:〒102‐8159 東京都千代田区富士見1‐9‐20桃井保子/奈良陽一郎*Yasuko Momoi, Yoichiro Nara第1回ラバーダムで患者に安全・安心をキーワード:ラバーダム,誤飲・誤嚥 2012年3月,日本歯科医学会は日本歯科医師会会員1,000名を対象に,歯科保健医療を推進するうえでの問題点の情報収集を目的としたアンケート調査を実施した1.ラバーダムに関連した質問がいくつかあるので,その回答を見てみよう. 小児の歯内療法でのラバーダムの使用については「使用しない」が59.7%と半数以上であり,「必要に応じて使用する」が31.4%,「装着が可能な限り毎回使用する」が4.6%,「その他」が1.3%であった(図1a).小児の歯内治療にラバーダムをしない歯科医師が約6割いる現状は,医療事故や治療の成否いずれの面からも憂慮すべきことである. 現在,歯学部生・医学部生にかかわらず,すべての学生は臨床実習開始前に共用試験実施評価機構によって管理された全国共通の共用試験(CBT・OSCE)にパスしなければならない.とくに共用試験歯学系OSCEでは,臨床実習生として求められる基本的な態度・習慣ならびに技能領域の能力を評価するための29課題の1つとして「ラバーダム」が採用されている.ラバーダムは,それほど基本的かつ重 また,一般の歯科治療において,修復物や補綴装置の誤飲・誤嚥を予防するためにもっとも心がけていることは「患者の顔を患側に傾ける」が59.7%,「舌根部にガーゼ等を置く」が16.6%,「デンタルフロスを活用する」が4.0%,その他が10.0%となっている(図1b). 歯内療法時の誤飲・誤嚥を予防するためにもっとも心掛けていることは何かとの問いには,「患者の顔を患側に傾ける」が57.1%,「ラバーダムを行う」が11.7%,「立位で治療する」が9.1%,「その他」と答えたものが11.9%であった(図1c).いずれにしろ,誤飲・誤嚥を予防するためにラバーダムを活用している歯科医師が少ないのが現状である.要な治療技術なのである. しかし,実際の保険診療でラバーダムを行っている歯科医師は少ないのが現状である.これは,2008年度の診療報酬改定時に,それまで保険点数(10点)が算定できたものが治療に包括されてしまい,実質無料となったことが大きく影響していると思われる. 今回の連載では,安全・安心の歯科治療にラバーダムが欠かせないことを改めて訴えたいと思う.連載にあたってアンケート調査に見るラバーダムの現状ワールドスタンダードな歯科技術80the Quintessence. Vol.32 No.7/2013—1452

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