ザ・クインテッセンス5月
5/8

日本とカナダから考える全部床義歯とインプオーバーデンチャーFEATURE特 集 4兒玉直紀岡山大学大学院医歯薬学総合研究科咬合・有床義歯補綴学分野元モントリオール大学歯学部客員教授連絡先:〒700‐8525 岡山県岡山市北区鹿田町2‐5‐1Current Status of Conventional Dentures and Implant Overdentures in Japan and CanadaNaoki Kodamaキーワード:下顎総義歯,IOD,患者満足度はじめに 長きにわたり無歯顎患者の欠損補綴治療の第一選択として全部床義歯(以下,CD)が用いられてきたが,1980年代にブローネマルクオッセオインテグレートインプラントが登場して以来,無歯顎患者に対してインプラントが積極的に用いられるようになった.その後,2002年にマギル声明が発表され,「下顎に埋入された2本のインプラントを用いたインプラントオーバーデンチャー(以下IOD,とくに2本支台のIODを2-IODとする)は無歯顎患者における第一治療方針である」と考えられるようになり,IODが日常臨床において積極的に用いられるようになった.さらに,2009年のヨーク声明において,「2-IODは従来のCDに比べて患者満足度ならびにQOLの観点からすぐれている」ことが示され,現在では,下顎無歯顎患者において2-IODが補綴治療のゴールドスタンダードであると考えられるようになった. 欧米では日本と比べて,歯科治療に関する保険制度の違いからIODが臨床応用されやすく,また,IODに関する臨床試験も数多く行われているが,日本においてはIODに関する臨床試験報告が少なく,さらにCDが無歯顎患者の欠損補綴治療の第一選択であると考えられている. 筆者は2014年にカナダのモントリオールにおいて無歯顎欠損患者に対するIODの臨床研究,さらには同患者におけるCDとIODの患者満足度に関する文献的レビューのアップデートを行った. そこで本稿では,筆者がモントリオールで実際にみて感じた無歯顎患者に関する補綴治療について,臨床経験のある日本とカナダの日常臨床,さらには臨床研究に関してCDとIODを比較してみたい.92the Quintessence. Vol.34 No.5/2015—0976

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です