ザ・クインテッセンス 2015年12月
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エナメルマトリックスデリバティブ塗布後の歯と歯肉の付着に注目してエムドゲインこそが歯肉を歯に『接着』させる98the Quintessence. Vol.34 No.12/2015—2604大阪歯科大学歯周病学講座連絡先:〒540‐0008大阪府大阪市中央区大手前1‐5‐17河野智生Tomoo Konoキーワード:エムドゲイン®,接着,根面被覆,付着Emdogain® Is What Adhering Gingiva to Tooth 1997年にHammaströmら1,2が,歯の萌出時にヘルトヴィッヒの上皮鞘から放出されるエナメル基質タンパクはエナメル質を形成するだけでなく,歯根象牙質表面へのセメント質形成にも関与していること(図1)に着目して,エナメル基質タンパク(大部分がアメロジェニン)を含んだブタ由来のエナメルマトリックスデリバティブ(以下,EMDと略)を歯周組織再生療法に応用した. 以来20年近くが経過し,その間にもPDGF(血小板由来成長因子)やBMP(骨形成タンパク)など,さまざまなサイトカインを用いた歯周組織再生療法が報告されてきたが,EMDを用いたエムドゲイン®は現在でも日本でトップシェアを占める歯周組織再生材料として臨床の現場で広く使用され,素晴らしい結果をもたらしている. EMDの作用機序に関しても現在まで数多くの報告がなされてきたが,まだまだ不明な点も多い.しかしながら,それはエムドゲイン®が単一サイトカインを用いた材料ではなく,細胞外に存在するマトリックスタンパクであるという性格上,当然なことであろう.それどころか,単一サイトカインを用いた治療法と比較すると,エムドゲイン®はより多種多様な細胞に対して,しかも歯の萌出時を模倣した形で協調して働きかけることができる.それは歯肉,歯根膜,セメント質,歯槽骨といった4つの異なった,しかも硬・軟組織が同居する歯周組織の治療にはもっとも適した材料ではないのかと考えられる. そこで,日本歯周病学会の治療のガイドラインにも記載され,さまざまなデシジョンツリーも発表されてすでに治療法として確立している垂直性骨欠損に対する歯周組織再生療法といった視点からでなく,歯肉と歯根の界面にとくに注目してエムドゲイン®をもう一度みつめ直していきたい.はじめにFEATURE特 集 3

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