ザ・クインテッセンス 2015年12月
8/8
超高齢社会におけるインプラント装着様式を再考するホームドクターの立場からはじめに わが国において,生涯のうち病気や障害がなく過ごすことができる健康寿命は男性が71.19歳,女性が74.21歳,平均寿命は男性80.21歳,女性86.61歳となっており,世界に先駆けて超高齢社会を迎えた(2013年厚生労働省発表).また,平成22年の歯科疾患実態調査によると,75歳以上の1人あたりの残存歯数は7本前後であり,まだまだ多くの患者は有床義歯にて咀嚼を営んでいるのが現状である.しかし,総義歯を含む多数歯欠損において,従来型の有床義歯では快適性や咀嚼能率などに満足を得られない場合があり,インプラント補綴は従来型の有床義歯に満足が得られない患者に対して期待され,臨床応用されたものである.下顎のインプラントオーバーデンチャー(IOD)がQOL向上や患者満足度,咀嚼能率において総義歯よりも有利であるという報告があり,欠損補綴においてインプラント治療は多くの患者に恩恵を与え,その維持や安定性から食を明るくし,健康寿命延長に一役を担う欠損補綴法として周知されているように感じる1,2. しかしながら,健康状態が良好な時期にインプラント治療を施した患者もやがて老いがくる.社会問題にもなっている要介護者の増加により,徹底した口腔ケアを行うことができず,インプラント患者のトラブルの発生を筆者は自院の訪問歯科診療のなかで経験している.今回は筆者の20年の臨床を検証し,超高齢社会を迎えた今,無歯顎を含む多数歯欠損症例において機能性・清掃性・永続性の観点から有効と考える上部構造装着様式について述べたい.1. インプラント治療の現状と 超高齢社会を迎えた今, 考えること̶当院のデータから 筆者の診療所は東京都練馬区の住宅地にあり,患者層は小児から高齢者まで幅広く,インプラント治療においては1997年から現在まで7,176本を埋入しており,症例数は年間約200症例となっている.これらを考察すると2005年から5年間をピークにやや減少気味である.しかし,症例数はそれほど変化を認めない.つまり1症例あたりの平均埋入本数が減東京都開業 たけした歯科連絡先:〒177‐0035 東京都練馬区南田中3‐1‐12竹下賢仁To Reconsider the Implant Fitted Style in Super-Aging Society~From Home Doctor's PositionKenji Takeshitaキーワード:超高齢社会,インプラント装着様式,ホームドクター186the Quintessence. Vol.34 No.12/2015—2692
元のページ