ザ・クインテッセンス 2016年2月
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次世代型の感染症治療“バクテリアセラピー”プロバイオティクスが変える医療はじめに:歯科と医科の垣根が本当に取り払われる時代の到来 これまで,掛け声のように「医科‒歯科連携」,「病診連携」,「地域包括医療」と叫ばれてきた.しかし,行政や法律の壁,またこれまでの慣習や歴史的経緯で,歯科と医科の連携が,介護の問題解決や健康寿命の延伸,また医療費の削減などの諸問題解決のもっとも重要な案件と認識されているにもかかわらず,なかなか歯科と医科の壁は高く,一部の篤志家的歯科医師や診療所に頼らざるをえないのが現状であった. 歯科が医科に対してもっともアドバンテージを持っているのは,われわれ歯科医師が咀嚼と嚥下と呼吸と発音の,そして感染症の入り口である口腔をもっとも専門的かつ原因の除去を行う医学分野の専門家であることのみならず,これらを補綴治療という人工臓器を用いて機能回復するという原因除去療法を行うことが可能という点である.たとえば,睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者に対し,MFTなどの筋機能訓練,そして顎位や舌骨位を補綴的・矯正的あるいはスプリントを用いて根本的に解決し,CPAPなどの装置に頼らずに,最終的にはスプリントも使用しないで夜間に正常な自発呼吸をさせることがわれわれ歯科医師には可能であることがあげられる(図1).耳鼻科医などの医師が行うOSASの治療は,中枢性のOSASを除きCPAPでは対症療法の域を出ていないといわざるをえない.また,誤嚥性肺炎なども,医師や看護師からの要請で治療介入するのではなく,病棟回診時に積極的に歯科医師や歯科衛生士が入院中の患者の口腔内を診察することで,すでに誤嚥性肺炎を発症している患者はもちろん,誤嚥性肺炎の予備群である無歯顎で舌根が沈下していたり,歯周病やその治療の放置によって口腔内の細菌が甚大に増殖していたりする患者の場合は,発症前診断と発症前治療1を行うことによって,誤嚥性肺炎自体を起こさせないことも可能である(図2,3)2. 幸運にも,筆者は精神科病院で理事長を経験し(図4),病院で患者の命を預かる身を経験したのみならず,歯科医師として,真の口腔から全身を治す医療を経験した.筆者が理事長となる前までは,夜吉野敏明/田中(吉野)純子Next-Generation of Infectious Disease Treatment─Bacterial Therapy─Toshiaki Yoshino, Junko Tanaka-Yoshinoキーワード:感染症治療,バクテリアセラピー,プロバイオティクス神奈川県開業 誠敬会クリニック連絡先:〒220‐0004 神奈川県横浜市西区北幸1‐2‐13 横浜西共同ビル5F124the Quintessence. Vol.35 No.2/2016—0374
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