ザ・クインテッセンス 2016年2月
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東京都開業 吉岡デンタルオフィス連絡先:〒101‐0062 東京都千代田区神田駿河台2‐3‐13 鈴木ビル1F吉岡隆知臨床で困らない歯内療法の基礎第2回 根尖撮影法卒後3年以内に読む!1デンタルエックス線での診断 臨床的に症状はないが,エックス線的に問題のある症例に遭遇することはよくある.エックス線的な問題とは,アンダー根充,オーバー根充,緊密度不良,根尖病変,器具破折,穿孔などである.これらの歯に歯冠修復を行う時に,再根管治療を行うか,行わないか. Schwendickeら1は,歯冠修復を行う場合の再根管治療について50歳の患者を想定し,その患者の生涯において,再度根管治療をやり直す必要があるかどうかをシミュレーションで検討した(図1).患歯は臨床的に無症状だが,エックス線的に根管充填あるいは根尖周囲の問題を抱える臼歯である.再根管治療しない場合の方が治療費は安く(589〜954ユーロ),歯の保存期間も長かった(25〜29年).歯冠修復前に再根管治療すると,それぞれ1,163〜1,359ユーロ,25〜27年であった.この研究では,実際にはエックス線写真を読影していない.そのような所見が得られたと想定したシミュレーションである.エックス線写真の読影は,観察者が違えば読影結果が異なるし,同じ観察者でも2回目に同じ読影結果になるとは限らない.読影結果を基にすると,観察によるばらつきの影響がでてしまう.根管充填状態の詳細や根尖病変の程度までの踏み込んだ検討はしていないことに注意は必要であるものの,再根管治療しない方が患者にとって経済的に有利で,しかも歯の寿命は変わらない.再根管治療は,無症状だがエックス線異常像を有する,というリスクを上回るとは思えないと結論づけている.2PAIスコア 根尖病変を評価する方法の一つにPAIスコア2があり,根尖病変の病理組織像とエックス線写真の形態の関連が検証されている.PAIスコアとは表1のようなもの3で,根尖病変をスコア化している.根尖部の状態の評価,根管治療の効果の評価などに用いられる. Tsesisら4は,歯冠修復を行った根管治療歯が有する根尖病変の長期的な動態を調べた.根管治療後1年以上経過した歯をベースラインとして,4年以上経過するとPAIスコアは28.5%の症例で変化がなく,51.5%は悪化(PAIスコアは増加),20%が改善148the Quintessence. Vol.35 No.2/2016—0398

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