ザ・クインテッセンス 2016年3月
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バイオロジーと歩む―歯周病専門医からの提言―FEATURE特 集 1はじめに 生体組織の基本構造における大原則は,その最表層部が外胚葉系組織で被覆されていることである.その理由は,皮膚や粘膜上皮など外胚葉系組織が解剖学的バリアとなって生体内部と外界を区分し,さまざまな機械的刺激やバクテリアの侵入を防ぎ内部組織を保護するためである.このような概念は,当然ながら歯の周囲においても成立しており,それは*牧草歯科医院,大阪歯科大学解剖学講座講師(非常勤)/*1oral design OSAKA*代表連絡先:〒610‐0313 京都府京田辺市三山木高飛55‐1牧草一人*/久保哲郎*1The Periodontist's Guide to a Biological Approach to Esthetic Prosthetics for Natural TeethKazuto Makigusa, Tetsuro Kuboキーワード:審美補綴,歯周病専門医,天然歯上皮性付着,結合組織生物学的幅径の存在として広く認知されている. しかしながら,ひとたび歯周炎が発症し歯周ポケットが形成されたり,歯肉退縮が起こり歯根表面が露出した場合には,外胚葉系組織のバリアが破られて中胚葉(外胚葉性間葉)由来である象牙質やセメント質が歯肉縁上に露出することになる.これは象牙質やセメント質が硬組織であることから臨床的に看過されることが多いが,生物学的には中胚葉系組織が露出している状態は骨や筋肉が露出していることと大差はなく,重篤な病的状態といえる.42the Quintessence. Vol.35 No.3/2016—0530
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