ザ・クインテッセンス 2016年3月
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85がみえてきた.それは,最近の海外の文献にもよくみられる抜歯窩の治癒過程や,シングルインプラントの予知性にも関連すると思われる.まだ考察としては未熟ではあるが,オベイトポンティックを用いた症例の術後経過から,長期維持のための一考察を試みたい.オベイトポンティックを考える際の重要なステップ オベイトポンティックを考える際に重要な事項を表1に示した.オベイトポンティックを考える際に重要な事項として,1.診断用ワックスアップの製作2.オベイトポンティックを可能にする歯槽堤形態3.プロビジョナルレストレーションでの評価4.適正な加圧を加味した印象採得5.術後の予知性の5つが挙げられるが,とくに2番目の歯槽堤形態をどう形づくるかが重要であると考えている.以下に,オベイトポンティック5症例を供覧し,長期維持を達成するためのポイントを探ってみたい.はじめに 1980年代初頭から,Rosenberg,Garber,Abramsらによってオベイトポンティックの臨床報告がなされるようになった1,2.オベイトポンティックにはすでに20年以上の歴史があるということになる.筆者がオベイトポンティックを臨床に取り入れはじめたのは1990年代半ばからであるが,それはちょうど患者の審美性に対する要求が高まりをみせはじめた頃であった3. 筆者は,オベイトポンティックの最大の利点である審美性を考える際,ポンティックの形態自体はもちろんであるが,その基底面に接する歯槽堤へのアプローチがとくに重要であると考えている.オベイトポンティックを臨床に取り入れはじめた当時から,抜歯予定部位にはその抜歯窩を硬組織によって維持したいと考えながら処置を行ってきた4.つまり抜歯をすれば,当然その歯槽堤の骨は吸収することから,歯槽堤増大術にてその形態を維持しようと考えていた. オベイトポンティックのブリッジ症例も10年近くが経過し,その術後経過を観察すると1つの方向性東京都開業 土屋歯科クリニック&WORKS連絡先:〒102‐0093 東京都千代田区平河町1‐4‐12 KDX平河町ビル1F土屋賢司今まで行われてきた治療法について,長期経過症例・文献をもとに,その適応と効果を「検証」し,さらに今後の展望を考察する.Approach to Alveolar Ridge for Ovate Pontic TreatmentKenji Tsuchiya検証の時代はじまるTHE VERIFICATIONオベイトポンティックのための歯槽堤へのアプローチの検証the Quintessence. Vol.28 No.8/2009̶1703 92オベイトポンティックのための歯槽堤へのアプローチの検証図23a,b 最終補綴物装着から9年後の状態.症例5症例5初診時:2000年.46歳,女性.処置:抜歯窩(辺縁骨は維持)に異種骨を移植した.図24a,b 初診時の正面観およびデンタルエックス線写真.図25a~c を抜歯後,異種骨にて歯槽堤保存を試みる.図26a~c プロビジョナルレストレーションで歯槽堤の形態を整えていく.the Quintessence. Vol.28 No.8/2009̶ 1710 図23a図23b図24a図24b図25a図25b図25c図26a図26b図26cシリーズ:治療経過・治療計画から学ぶ臨床の真実3帰ってきた症例PLAYBACK術後経過から学ぶ-その再評価と考察および現在の考え方オベイトポンティックのための歯槽堤アプローチからインプラント周囲組織を学ぶ東京都開業 土屋歯科クリニック&works連絡先:〒102‐0093 東京都千代田区平河町1‐4‐12 三信平河町ビル1F土屋賢司Learning the Peri-Implant Tissue from the Alveolar Ridge Aug-mentation for Ovate Pontic Receptor SiteKenji Tsuchiyaキーワード:オベイトポンティック,歯槽堤アプローチ,インプラント周囲組織FEATURE特 集 5対象症例は2009年8月号に掲載された「THE VERIFICATION」(検証の時代はじまる)欄の症例5.2009年8月号からPLAYBACK©Printed in Japan通巻第332号 2009年8月10日発行 毎月1回10日発行 昭和57年2月27日第三種郵便物認可年間購読料 定価 30,240円(本体28,800円)1部定価 2,520円(本体2,400円)2009 vol. 28 no.88歯科臨床家のための総合学術誌昭和57年3月27日第三種郵便物認可 ISSN 0286‐407X 2009年8月10日発行 毎月1回10日発行 通巻第332号http://www.quint-j.co.jp/20092009 Vol. 28vol. 28 no.8August8■ 特別座談会:続・若き臨床医に捧ぐ/榎本紘昭・下川公一・上野博司・樋口琢善・米澤大地■ 集中連載:「骨と骨移植」を文献・臨床から斬る/赤野弘明8「若手歯科医師」向け─「ベーシック」を極める■明日から変われる毎日使える臨床ヒント歯内療法の目的とアピカルシートの位置甲斐康晴■New Essence:the Debut多数の骨縁下欠損を有する重度歯周病患者に再生療法および切除療法で対応した症例岩田光弘「総合治療」を目指す・極める■長期症例に学ぶ──その治療は果たして適正であったか?フルマウス18年症例で生じたトラブルとそのリカバリー榊 恭範■超高齢社会における歯科医療・口腔保健の行方4歯科医療の遠心性をどう捉えるか?(最終回)中村譲治/深井穫博/高江洲義矩「専門治療」を目指す・極める■ 「骨と骨移植」を文献・臨床から斬るすべてはオッセオインテグレイションのために第1回 骨とそのバイオロジー赤野弘明■RECONSIDERATION OF SPLINT THERAPYスプリントを用いた診断山影俊一■THE VERIFICATION 検証の時代はじまるオベイトポンティックのための歯槽堤へのアプローチの検証土屋賢司特別座談会:続・若き臨床医に捧ぐ 歯科医師が一生かけて追い求める“歯科医療の真実”とは何か?榎本紘昭/下川公一/上野博司/樋口琢善/米澤大地H1-H4_TQ08.indd 109.7.14 1:29:10 PM120the Quintessence. Vol.35 No.3/2016—0608

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