ザ・クインテッセンス 2016年4月
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FEATURE特 集 2鶴見大学歯学部歯内療法学講座連絡先:〒230‐8501 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2‐1‐3細矢哲康Root Canal Treatment for the Elderly : Part 2Noriyasu Hosoyaキーワード:根管治療,加齢変化,根管解剖超高齢社会を迎えた今だから知っておきたい高齢者における歯内治療Part2はじめに ヒトは出生と同時に加齢という生理現象が開始する.そして加齢が進むにつれて種々の器官の機能は低下し,形態学的にも変化が現れ,老化という現象が認められるようになる. 歯の加齢にともなう形態学的変化としては,象牙芽細胞ならびにセメント芽細胞によって象牙質とセメント質の厚さが増加する.象牙質においては,生理現象として第二象牙質が形成され,外来刺激や傷害が加わることにより局所的に第三象牙質が形成される.また歯髄組織の加齢変化にともなって,歯髄内に象牙質粒(歯髄結石)や石灰変性を生じることも少なくない.第二象牙質や第三象牙質の添加は根管治療に種々の影響を及ぼすことが多く,高齢者の処置の際には,あらかじめ形態学的変化を念頭に置いて治療を進めることが必要である. 近年,根管治療における術式や器機の進歩はめざましいが,通常の処置だけでは症状が改善しない症例や根管充填に至らない症例も多い.根管治療におけるこれらの難症例は,根尖性歯周炎の原因である,根管内の感染源の除去が困難な症例と言い換えることもできる.また歯髄炎に対する抜髄処置においても,完全な軟組織の除去や確実な根管充填が困難な症例などは難症例に含まれる.根管の感染は口腔内微生物の複合感染であり,機械的な根管拡大や化学的清掃ならびに根管貼薬などによって根管消毒が行われるが,従来の根管貼薬では奏功しにくい微生物の存在なども報告されている.しかしながらin vitroの研究では,これらの微生物に対しても効果があるとの報告がある1.すなわち根管貼薬や化学的な根管清掃が,十分かつ効果的に行われる環境が整っているかが大きな問題といえる.確実な機械的根管拡大や形成が行われることにより,根管貼薬80the Quintessence. Vol.35 No.4/2016—0806
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