ザ・クインテッセンス 2016年4月
5/8
根管の解剖1や化学的な根管清掃の効果が得られる.そして十分な根管拡大や形成が困難となる原因は,その多くが複雑な根管系という解剖学的問題にある. 加齢による歯の硬組織の変化は,根管系の解剖学的形態をさらに複雑化することになり,高齢者における根管治療では難治症例の割合が増加することが 日本人の永久歯は歯種によって歯冠の形態や歯の長さがさまざまであるが,歯根長に着目すると大きな差は認められない.男性の歯根長は犬歯を除くと上顎が約12.5mm,下顎が約12.3mm,犬歯は上顎が約15.9mm,下顎が約14.5mm程度である.女性は上顎が約11.9mm,下顎が約12.1mm,犬歯は上顎が約15.2mm,下顎が約14.1mm程度である.すなわち犬歯を除けば,男女ともに永久歯の歯根長は約12mmとして治療に臨むべきである2,3. 根管治療を行う際には,根管形態を立体的にイメージしながら処置を進めることが重要であること容易に想像できる.したがって高齢者の根管治療においては,とくに根管の解剖学的形態を立体的にイメージしながら処置を慎重に進めることが重要である.また訪問診療などでは画像データが皆無の場合もあり,一般的な根管の解剖学的形態に関する知識は不可欠である.は前述したが,あらかじめ臨床的な根管形態の分類を把握しておくことも必要である.根管形態の分類は多くの研究者が報告しており,Vertucci4は根管形態を8通りに分類しているが,臨床的にはWeine5の4通りの分類が有効と思われる.しかしながら,すべての根管形態が4種類に分類できるわけではなく,各Typeから多少変化した中間的な形態や加齢による象牙質添加により,分類のTypeが変化するような状況があることを前提に治療に応用するべきである(図1).81the Quintessence. Vol.35 No.4/2016—0807
元のページ