ザ・クインテッセンス 2016年4月
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CADを応用した咀嚼運動の新しい解析方法chewingを再考する緒言 現在,ME機器の進歩やデジタルデンティストリーの発展により歯科医療は変革しつつある.ME機器のなかでも,下顎運動解析機器の発展は,直接見ることができなかった下顎運動を三次元的に可視化してくれた.下顎運動を三次元6自由度運動として捉えることにより,咬合面の動き,咀嚼運動のパターン,限界運動路と機能運動路の違い,咀嚼運動時の作業側・非作業側の時間差,咀嚼運動時の下顎頭の動きなど,さまざまなことが目で見えるものとなった.とくに,咬合面形態の是非が科学をもって論じることができ始めた事実は,歯科界にとって,病因論から修復の形態,予後に至るまで大きな価値があると思っている. しかし,実際は下顎運動解析器で計測された運動軌跡と患者の口腔内を見て,自分の頭のなかで咀嚼運動を再構築する必要があり,咀嚼運動と咬合面形態の関係を理解することが難しい側面もあった. そこで今回,超音波式下顎運動解析機器とCADを用いることにより,患者の実際の口腔内を再現しながら,咬合面形態と咀嚼運動の関係性を動きとして捉え,下顎運動解析を行うことができたので,症例とともに報告する. また,当院では長年下顎運動解析機器として光学式非接触型下顎運動解析機器を使用してきた.光学式非接触型下顎運動解析機器と超音波式下顎運動解析機器を比較し,超音波式下顎運動解析機器の有用性についても考察する.咀嚼運動について まずは,咀嚼運動についての基本を述べたい.一般に,咀嚼運動路は限界運動路と異なり,違った経路を通り運動している.前頭面では同じ経路をたどっているように見えるが,水平面で見ると,限界運動路は前方・側方に滑走しているのに対して,咀嚼運動路は後方にサイクル運動をしている(図1). そして,咀嚼運動路は大きくチョッピング型とグラインディング型に分類できる.前者は作業側のみでサイクルを描き,後者はいったん非作業側に開口筒井武男/筒井祐介A New Analytical Method of Masticatory Movement Using CAD Softwares: A Review of "Chewing"Takeo Tsutsui, Yusuke Tsutsuiキーワード:CAD/CAM,デジタルデンティストリー,下顎運動解析,咀嚼運動福岡県開業 筒井歯科・矯正歯科医院連絡先:〒807‐0825 福岡県北九州市八幡西区折尾3‐1‐5Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P169,174 178,179165the Quintessence. Vol.35 No.4/2016—0891

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