ザ・クインテッセンス 2016年5月
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東京都開業 上野歯科連絡先:〒176‐0012 東京都練馬区豊玉北1‐2‐17 テラスウィステリア1F上野博司Part3. Theory and Clinical Step of ExtrusionHiroshi Uenoキーワード:挺出,歯根膜線維,外科的対応はじめに 前回(3月号)は,挺出の実際についてお伝えした.今回は,挺出とともに周囲組織にどのような変化が起こり,どう対処していくかについて,実際のケースを供覧しながら述べていきたい. 挺出が終了したとき,通常対象歯は動揺しているので,何らかの保定装置が必要となる.その時期に装置を撤去したり,過度な咬合接触を付与したりしないほうがよい.そして,保定していないと,リラップス(後戻り)が生じ,せっかくの歯牙移動が徒労に終わってしまうことになる.今まで使用してきた挺出の装置はそのまま使用して,即時重合レジンやフロアブルなコンポジットレジンなどで主線とフックを被包し,固定効果を得るようにすればよい(図A). 挺出による組織学的な変化機序は以下となる.「歯根膜が張力を受けると,コラーゲン線維は引っ張られる.線維芽細胞は紡錘形になり,線維束の長軸に並行に配列し,線維芽細胞が増殖し骨基を生産する.これにより歯槽骨が牽引側に増加することになる」1.つまり挺出によって,周囲組織は牽引側に増大し(図1),外科的に対処する必要が生じる(図2~4). 「ここが肝!」(次頁参照)にも記したが,一般的にもよく耳にする“③歯根膜線維(そのうちの歯槽頂線維)の離断により,リラップスの防止を図る”については,範囲があくまで歯肉溝底部から歯槽骨辺縁部のごく一部に対するもので,歯根を取り囲む大部分の歯根膜線維(水平線維,斜線維,根尖線維,根間ここが肝,MTM第3回 挺出の実際 その2:挺出後のポイントBasicforAdvance本連載は奇数月に掲載挺出終了後の保定レジンにて被包する主線図A 挺出装置はそのままにレジン等で主線とフックを被包し固定する.218the Quintessence. Vol.35 No.5/2016—1190
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