ザ・クインテッセンス 2016年6月
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義歯粘膜面適合検査の評価基準を探る前編: 適合試験材,どう使えばいいの? ──その特性を知るはじめに 義歯が正しい機能を営むには,十分な支持と維持,そして適切な筋平衡と咬合平衡の確立が必要であるとされている1.これらの確立をみるとき,義歯は機能的に安定した状態となり,義歯床粘膜面は顎堤粘膜に接着し,義歯床粘膜面適合検査(以下,適合検査という)において良好な適合を示すことになる.このことから,適合検査での良好な適合は,その義歯が正しく機能していることの証となる重要な臨床所見の1つといえるであろう. 適合検査には,歯科適合試験用材料(以下,適合試験材という)の使用が必須である.一材を塗布して使用するペースト系(以下,ペーストという)と,ベースとキャタリストの練和物を盛り付けて使用するホワイトシリコーン系(以下,シリコーンという)の両者が広く臨床活用されている(図1).しかし,その選択基準,使用方法,そして何よりも検査の評価方法については,術者間の共通認識のないまま,臨床の各局面における判断を各々の術者に委ねているのが現状である.とりわけ,下顎総義歯は,適合の不正が床下粘膜の傷および疼痛を惹起しやすく,ひいては義歯治療の第一義的な目的ともいえる咀嚼機能の回復の損失につながりやすいことから,適合検査の確実な評価を必要としている. そこで本稿は,下顎総義歯に焦点を絞って,適合検査結果の良否判定はもとより,適合そのものを明確に評価できる基準を策定することで,義歯治療に寄与することを目的とするものである.本稿は前・後編の2部構成となる.今回はその前編として,適合試験材の選択基準ならびに使用方法を考えるうえで必要となる材料特性について整理していきたい.なお,義歯床粘膜面の適合を調べる行為は,適合試験と表現されるのが慣例であるが,本稿では,あえて適合検査としている.試験とは「物の性能や力を試すこと」であるのに対して,検査は「ある基準のもとに異常・不正の有無を調べること」を意味する.当該行為はまさしく後者であるとの判断からである. 一方,歯科適合試験用材料という用語については,歯科用印象材料の一分類としての登録名称である関係上,そのまま使用することとした.市川正人The Assessment Standards of the Denture Base-Mucosal Surface Interface in Mandibular Complete Denture using Fitness Test Material Part 1: How to Use it ? —— the Characteristics of the Material Masato Ichikawaキーワード:義歯,歯科適合試験用材料,適合試験(検査),評価基準福井県開業 市川歯科医院連絡先:〒919‐1138 福井県三方郡美浜町河原市3‐2182the Quintessence. Vol.35 No.6/2016—1416

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