35the Quintessence. Vol.40 No.7/2021—1659編集部 これから始めさせていただこうと思います.はじめに,牧草先生にbiologic widthと,新しいsupracrestal tissue attachmentのおさらいをしていただいて,ケースプレへと進みたいと思います.よろしくお願いいたします.牧草 2017年ワールドワークショップで,「The term biologic width should be」という比較的強い言葉で,「replaced by supracrestal tissue attach-ment」とされました.和訳では,「生物学的幅径とは,骨縁上部における付着組織の根尖から歯冠側方向の幅を説明するために使用されている臨床用語である」と書かれています.この「骨縁上部の付着組織が,組織学的には接合上皮と骨縁上部の結合組織付着から構成されていることを考えると,生物学的幅径という用語は,骨縁上部組織付着(supracrestal tissue attachment)という言葉に置き換えられるべきである」と表現されているのは周知のことです.これが今後スタンダードになっていくということですが,これに対して,私は否定的な立場で議論しています.1)biologic widthの役割 Biologic widthに関しては,海外の論文でも,解剖学的障壁,バリアとしての役割,外部からの侵入を防ぐということが,後々「biologic width」という言葉に置き換えられているということです1.すなわち,いわゆるdimension,厚みが主たるテーマで議論されているので,組織の付着ということが一般的ではないかと思います. 実はbiologic widthというのは,厚みも確かに重要なのですが,生体の防御バリアとしての役割があります.とくに歯肉溝内においては,図M1aのようなループがあります.これは普通のカメラで撮っても,このような歯肉の周りのループは観察できます.さらに,動物実験において走査型電子顕微鏡で観察するとループ状の構造はより明確です(図M1b).今は患者さんの生体のなかを流れる血液の循環をみられる顕微鏡があります.動画も撮影可能なのですが誌面ではおみせできないのが残念です.われわれも日常的に患者さんの毛細血管をみて,歯周組織が健全かどうか,糖尿病の疑いがないかどうかをこのバイオロジーのメカニズムでみています.生物学的はじめに:biologic widthとsupracrestal tissue attach-mentの違い図M1a図M1b図M1a 支台歯形成された後の歯肉内縁部:通常のデジタル一眼レフカメラでも歯肉溝内の毛細血管が観察できる.図M1b ニホンザルの歯肉溝内に分布する走査型電子顕微鏡写真.毛細血管の血液循環
元のページ ../index.html#2