●顎口腔系に起こるトラブルの原因断を行わなければならない.リスク診断の結果に基づくことで,治療計画,補綴設計,メインテナンスプログラムが立案できると考える.2013年に筆者が本誌に掲載した本シリーズ第1弾では,その力のリスク診断はどのように行えばよいのかを,日常臨床で実践的に取り入れやすい形で提案した1.ここで図2に,今一度力の診断項目をわかりやすく整理する. 咬合や力の分野の概念は,複雑で難解であると認識されている.しかし実際は,さほど難しいことではないのである.重要な点は,われわれ臨床家は何のために力のリスク診断をし,力のコントロールをするのか? ということだ. その答えは簡単である.「修復物・補綴装置の脱離,セラミックの破折,インプラントスクリューの緩み,歯根破折などの,『力によって起こるトラブル』を回図1 顎口腔系に起こるトラブル(歯を失わせる事象)の原因.特殊なケースを除き,トラブルの原因のほとんどはこれら4つに包含される.図2 力のリスク診断項目.1~5では患者の歯の位置と形態(咬合状態),つまり力を受ける側を評価し,6で,どのくらいの力がかかっているか,つまり力をかける側の評価をする.the Quintessence. Vol.40 No.11/2021—270553●力のリスク診断だけなのだ.よってわれわれは,力に関して,経験的・感覚的に強く認識している事項を収集,シェアし,実践して検証することによって,エビデンスにまで持ち上げなければならないのである. 各論に入る前に少し言及しておきたいのは,難解で人を圧倒するような咬合理論は,われわれ臨床家には必要ないということである.そのため本稿では,できるだけ「臨床的」で「実践的」で,「明日から使える」情報となるようにお伝えしていきたい. われわれは日常臨床において,う蝕のリスク診断,歯周病のリスク診断を行うのと同様,力のリスク診1.顎関節・周囲組織2.垂直的下顎位3.水平的下顎位4.前歯(とくに犬歯)の位置と形態5.臼歯咬合面形態6.力によって起こる現象とトラブル1.う蝕2.歯周病3.力(咬合)4.医原性この中から,真の原因を突きとめる!1.力のリスク診断
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