新連載第1回妊婦に対するかかりつけ歯科の役目とは母親となる妊婦の口腔健康から子どもの口腔健康へ──生涯にわたる健康へとつながる“輪”を「歯科」から始めていきませんか? 医学部では産婦人科学のなかで,妊娠や妊婦について多くを学べますが,歯学部では妊婦特有な口腔内の変化として「妊娠性歯肉炎(図1a)」や「妊娠性エプーリス(図1b)」を,歯周病治療学の教科書や講義で学ぶ程度です.近年は「妊婦歯科・マタニティ歯科」という言葉も使われ,セミナーの開催や特集として雑誌に掲載されることも多くなりました.しかし,臨床の現場では,いざ実際に妊娠している,または妊娠している可能性のある女性が受診すると,その対応にとても悩まれることと思います.図1,図2に示したような口腔内症状に対して,単に「妊娠しているからていねいに歯みがきをしてください」と伝えるだけでなく,妊婦に寄り添った歯科からの口腔健康指導,支援,そして必要であれば歯科処置を行うことが重要だと思います. 新しい命を宿した妊婦だからこそ,歯科受診をしたことで改めて「口腔の健康」の重要さを意識してもらえたら,妊婦本人だけでなく,家族そして生まれる子どもたちにも,その重要性や必要性を引き続き歯科から指導,支援できると思います.──そう願っています. 詳細な内容は第2回から述べますが,今回はまず連載の導入として,なぜ妊娠すると口腔内が変化するのか,なぜ妊娠期に口腔の健康が大切なのか,どうして歯科からの指導や支援が必要なのか,妊婦が歯科受診した際にはなにをすべきなのか,なにが大切なのかなどをお伝えしたいと思います.藤岡万里千葉県勤務 あびこクリニック*/昭和大学歯学部小児成育歯科学講座連絡先:〒270‐1166 千葉県我孫子市我孫子4丁目3‐25*108the Quintessence. Vol.40 No.11/2021—2760連載のはじめにマタニティ期も!出産後も!のお母さんと子どもお母さん 子ども口腔と健康を守る歯科医療
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