「生物学的幅径」の機能と臨床的意味 2017年のAAP/EFPのワークショップにおいて,「biologic width(生物学的幅径)」の考え方が見直され,「supracrestal tissue attachment」と改められ,日本歯周病学会からその日本語訳が「骨縁上組織付着」と発表された.このような用語の改訂は,医学の世界ではめずらしいことではない.しかしながら,新用語の名称およびその考え方が浸透するまでには時間がかかり,臨床の現場では混乱が生じることもまためずらしいことではない. 以前より歯周組織の健康を維持するためには,「生物学的幅径」の順守が第一と考えられてきた.しかしながら,新しい用語,考え方の改定により,臨床上どのような変更点があるのか,またはないのか,が臨床家に正しく伝わっているのかは疑問である.用語の変更は名称が変わっただけなのか,なぜわざわざ名称を変更する必要があったのか,はたまた用語の解釈そのものが変わったのか,など多くの疑問が生じる. そこで本稿では,いま一度「生物学的幅径」の「形態学」つまり解剖学的特徴を整理しつつ,「機能学」つまり生物学的役割りについて歯周組織と歯冠補綴装置の接点について再考してみたいと考える.Reconsidering the Functional and Clinical Significance of Biologic Width36Kazuto Makigusaキーワード: biologic width,生物学的幅径,歯肉縁下マージン,S Shape Profile牧草一人京都府開業 牧草歯科医院連絡先:〒610‐0313 京都府京田辺市三山木中央4‐3‐11the Quintessence. Vol.41 No.1/2022—0036特 集 1はじめにいま改めて考えたい
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