大学病院や総合病院内の歯科医師だけではなく,一般の歯科診療所の歯科医師でも医科との連携が重要になってくると予想される. そのためには,すべての歯科医師が医科疾患の基本知識を得て,自分たちで歯科治療時に必要な対応策を考え,医師と診療情報のやり取りをする必要がある. 先生方の歯科診療所では,初診の患者が来院されたときにまず何をしているだろうか.当院ではすべての初診患者に対して問診票(予診票)の記入および薬剤手帳の提出をお願いしており,そこで得られた情報を基に医療面接を行い,治療方針について検討している. 医療面接は,主訴,現病歴,既往歴,家族歴などを医師から患者に尋ねて医療情報を得る医療行為である.一般の歯科診療所における医療面接では,歯科受診のきっかけとなった主訴や歯科治療に関する希望の聴取,これまでの歯科治療における偶発症の聞き取りが中心になるが,既往歴や薬剤使用歴の聴図1 医科とスムーズに連携して患者ごとに最適な歯科医療を提供できるように,全身疾患や薬に関する研鑽を続けていく必要がある.the Quintessence. Vol.41 No.1/2022—0117117■最適な歯科医療を提供するためには全身疾患や薬に関する知識のアップデートが必要 全身疾患をもつ患者に対して歯科治療を行う際には,実際に治療を行う歯科医師が全身疾患に対して理解をし,対策をしてから治療を開始すべきだと筆者は考えている.医科の診療ガイドラインは数多く存在するうえに年々変更されており,つねに新しい情報を得ていく必要がある.われわれは歯科専門職だが,医科とスムーズに連携して患者ごとに最適な歯科医療を提供できるように,全身疾患や薬に関する研鑽を続けていく必要がある(図1). 現在,医科では旧来の診療科ごとの診療ではなく,専門領域や職種を超えて連携しながら診療をしていく体系が標準化されてきている.しかし,歯科では診療所単位での診療が多くを占めており,医科と歯科の間で積極的に診療情報の連携が行われているとは言いにくい. 平成29年に厚生労働省より提言された歯科保健医療ビジョンでは,病院所属の歯科医師は医師などの他職種と連携を図りながら歯科医療を行うことが求められた2.今後,高齢化がより進行するとともに,1.有病高齢者が歯科医院を訪れるようになった時代に歯科はどう対応すべきか2.患者の全身疾患に関する情報収集
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