図1 典型的な反対咬合を呈する中年期患者の口腔内.大臼歯部に欠損が生じ,隣接歯の移動をともなっている.まさに咬合崩壊の口火が切られている状態である.図2a,b 初診時の口腔内写真とパノラマエックス線写真.図2c,d 10年後の再初診時の口腔内写真とパノラマエックス線写真.下顎最後方歯を歯周疾患で喪失している.the Quintessence. Vol.41 No.3/2022—054331反対咬合の典型例①反対咬合の典型例②は初診時パノラマエックス線写真,図2dは10年後の再初診時のものである.下顎最後方歯を歯周疾患で喪失している.この患者には矯正治療を勧めたが受け入れていただけなかった. 反対咬合の患者では,咬合性外傷の問題もよくみられる.やはり前方歯群で滑走運動のコントロールを適度に行えるほうが,安定した口腔環境を維持できているようである.対応方法としては矯正治療による被蓋の改善に加えて,必要に応じた補綴治療の適用が挙げられる. 本稿では,日常臨床において多々遭遇する反対咬合に焦点を当て,矯正治療がもたらす抜本的な咬合改善と補綴治療による咬合の緻密化について,1人の一般開業医(以下,GP)がすべての治療工程を包括的に行うことを前提に紹介していきたい.報告3,4によると,8020達成者約300人の口腔内を調査したところ,反対咬合や開咬は皆無であり,正常な被蓋をもち,顎骨もしっかりしていて緊密咬合をもつことが,達成者の特徴であったという. 筆者のクリニックでも反対咬合と開咬の患者においては,口腔内の状態が良い方は少なく,臼歯への補綴的介入(修復歴)が目立ち,欠損が多い傾向を実感している. 反対咬合の典型例を図1と図2に示す.図1は中年期の女性で,反対咬合の問題点が次々に噴出してきている状態である.上顎左側小臼歯に側方圧がかかっており,歯列から外れてきて歯周炎もともなっている.下顎第二大臼歯は欠損しており,上下顎右側中切歯は切端咬合となる. 図2は,歯周疾患が顕著なタイプである.図2b図2a図2b図2c図2d
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