abcefd図1a~f a,b:2本の縦切開を含む台形弁の切開線(青線部)を加え,歯肉を剥離する.c:フラップを歯冠側に位置付け,縫合する.d:2週後の抜糸時の状態.順調な治癒が確認できる.e,f:術後3年(e)と術後6年(f)の状態.求める根面被覆量に応じた切開線の設定とフラップの位置付けによって,獲得された根面被覆が長期にわたり維持されている.the Quintessence. Vol.41 No.7/2022—1515352)根面被覆術におけるEMDの有用性 しかしながら,歯周組織の治癒形態が長い上皮性付着であると考えられているEMD非適用群(CAF+CTG)4,5と,結合組織性付着の再生が期待できるEMD併用群(CAF+CTG+EMD)6,7の術後経過になぜ差がないのか,その理解に筆者らは頭を悩ませてきた. そのようななか,「CAF+CTG」あるいは「CAF+CTG+EMD」で根面被覆術を行い,その結果を比較検討した結果,術後3年経過時点でEMD併用群のほうが有意に良好な平均根面被覆率を示していたという報告11,12がなされた.この結果は,中・長期的に良好な経過をみる根面被覆術に対するEMDの有用性を示唆するものであり,たいへん興味深い. そこで本稿では,根面被覆術の適切な術式選択に関連するエビデンスを整理しつつ,根面被覆術におけるCTGとEMDの効果についていま一度考察していきたい.CAFを用いた単独歯に対する台形弁による根面被覆術(coronally advanced flap with trapezoidal flap design)+CTG」に併用すると,組織学的に歯周組織(セメント質,歯根膜,歯槽骨)の再生が確認された症例も報告されている6,7. しかし,CAF+CTGにEMDを併用しても術後の平均根面被覆率などの臨床結果に有意な差が認められないとする報告8,9が複数なされているため,EMDには創傷治癒促進効果による痛みの軽減効果などがある10ものの,費用対効果の観点からCTGを用いた根面被覆術に対するEMDの併用は一般的には推奨されてこなかった5.このことも,CAF+CTGが術式としてゴールドスタンダードとされている理由の1つである.根面被覆術における術式
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