the Quintessence. Vol.41 No.7/2022—1560 口腔機能発達不全症は,口腔機能低下症とともに2018年の公的医療保険における診療報酬改定により,新たな対象疾患名として承認された.また,2020年からは乳児期の小児もその対象となり,歯科における保険診療の範囲で,授乳,離乳を経て摂食嚥下機能の獲得について指導・管理を行うことが可能となっている. 健全な口腔機能は,他の身体機能と同様,乳幼児期に大部分の基本的な機能を獲得する.この時期の機能の獲得を阻害する因子を早期に発見して除去することは,健全な歯列・咬合および顎顔面部の形態的成長と口腔機能の発達に必要不可欠である. 実際には,習慣性口呼吸や口唇の閉鎖不全,構音の異常などの口腔機能の問題は,幼児期の終わりから学童期に顕在化することが多い.機能的因子が歯列や顎顔面の成長に大きく関与することから,健全な口腔機能の発達を阻害する因子を早期に診断し,適切な対応をとることが,これからの歯科医療が果たす役割として重要となる(図1)1. そこで本稿では,口腔機能の発達を阻害する4つの因子(う蝕,口腔習癖,構音機能と舌小帯の異常,離乳から咀嚼機能獲得の過程における問題)についての概要を述べたうえで,構音機能障害を主訴として当院に来院した幼児の治療経過について述べる.木本茂成神奈川歯科大学小児歯科学講座 連絡先:〒238‐8580 神奈川県横須賀市稲岡町82Shigenari Kimotoキーワード: 口腔機能発達不全症,舌小帯短縮症,舌小帯切除術,MFT,構音障害Management of Children with Articulatory Dysfunction due to Ankyloglossia: Oral Myofunctional Therapy Before and After Lingual Frenotomy80舌小帯切除術の前後に行うトレーニングの実際特 集 3舌小帯短縮症によるを有する小児へのはじめに
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