ザ・クインテッセンス 2022年7月号
7/9

111水口稔之東京都開業 水口歯科クリニック新宿連絡先:〒151‐0053 東京都渋谷区代々木2‐13‐5‐8FToshiyuki Mizuguchiキーワード:コラーゲンボールテクニック,コラーゲンマトリックス,軟組織増生 歯を失う時,同時にその周囲組織も減少してしまう場合が多い1.その際には,組織の増生が必要になる.硬組織の増生においては,使用するマテリアルとして自家組織と非自家組織の選択が必要である.日本歯周病学会が行った会員向けのアンケートでは,インプラント治療における骨増生で「自家骨を使用する」と回答した者は24%であった2.つまり,それ以外の者はバイオオスといった非自家骨を使用していると思われ,その理由として「ドナーサイトの侵襲」が考えられる. では,軟組織の増生の場合はどうであろうか? 自家組織を使用した結合組織移植(connective tissue graft:CTG)や遊離歯肉移植(free gingival graft:FGG)が多く行われているが,それらも「ドナーサイトの侵襲」という問題が存在する. そこで本稿では,この軟組織増生における「ドナーサイトの侵襲」を解決する新しい術式を報告する. 軟組織増生においては口蓋からの自家組織採取が必要であり,先述したように「ドナーサイトの侵襲」という問題が存在する.2006年にGriffinら3は,自家軟組織の採取は術後疼痛の増加,術中および術後の出血の増加,手術時間の延長,一過性の口蓋感覚障害などを引き起こすと報告した.また2011年,McGuireら4は,患者の評価において非自家組織増大術を望む者が多いと報告している. 近年,軟組織増生においてムコグラフト,ボティス,テルダーミスといったコラーゲンマトリックスが使用されるようになった.2015年のSchallhornら5によるムコグラフトを用いた軟組織増生や,同年のFroumら6によるムコグラフトを用いたインプラントの角化歯肉幅の増大などが報告されている.このような非自家組織のマテリアルを用いれば,ドナーサイトである口蓋歯肉を傷つけずに軟組織増生が可能になる.The Ball Technique for Peri-implant Soft Tissue Augmentation Using a Xenogeneic Collagen Matrixthe Quintessence. Vol.41 No.7/2022—1591はじめに軟組織増生におけるコラーゲンマトリックスの有用性~コラーゲンマトリックスによる大幅な軟組織増生~特別寄稿ザ・コラーゲンボールテクニック

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る