c図1a~d 重度歯周炎患者に対して,残存歯を最大限に保存した症例(a,b)と,治療後の口腔状態の長期的な維持安定を優先し予後不良歯をすべて抜歯した症例(c,d).残存歯数が多いことが必ずしも患者の健康増進やQOLに良い影響を及ぼすとは言い切れない.abdthe Quintessence. Vol.41 No.8/2022—176737◆残存歯を最大限に保存した症例◆予後不良歯をすべて抜歯した症例際して,予後不良歯,とくに重度歯周炎罹患歯の扱い方には確固たるコンセンサスはなく,それらを最大限に保存する方針(図1a,b)から補綴介入前に予後良好歯以外はすべて抜歯してしまう方針(図1c,d)までさまざまである. 本連載では,歯周炎に罹患した部分歯列欠損患者に対する「部分床義歯による補綴治療」に焦点を絞り,補綴介入前の歯周治療から補綴治療完了後の経過観察まで,実例を交えて臨床上の注意点やコツ,それらの根拠となる情報について詳しく述べていきたい. 第1回は,補綴装置で支台歯を守り,機能させる前に「すべきこと」と「できること」に焦点を当てて解説していく.重度歯周炎患者の残存歯は「保存?」「抜歯?」 欠損が存在しない歯列における歯周治療では,歯の保存が機能回復に直結する.一方,残存歯を支台歯として用いる「欠損補綴が必要な部分欠損歯列」では,歯を保存したうえで,補綴装置の支台歯として機能させることにより初めて機能回復が成立する.1)義歯治療で支台歯を活用する 補綴装置の支台歯は,直接咬合した際のストレスに加え,欠損部(人工歯部)で咬合した際のストレスの一部も負担しなくてはならない.このため,歯周1.欠損補綴を前提とした歯周治療のポイント
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