1臨床応用前の疑問編a図1a~c NMCDには,メタル構造物を使用しない剛性のないNMCD(a)と,メタルのレストや連結子などを併用した剛性のあるNMCD(b,c)がある.⁃NMCDのバリエーションbcまったく異なる. 維持力に影響する要素は,歯冠の形態,レジンクラスプの長さや厚さばかりでなく,歯槽堤の形態もかかわってくるため,ノンメタルクラスプにおいて,メタルクラスプのように計算で維持力を求めることは,まだできていない.現在のところ,バルプラスト(ユニバル)のように軟らかい樹脂であれば,歯冠の歯頸部寄りに0.75mmのアンダーカットが,その他の樹脂であれば0.5mmのアンダーカットが適当とされている. さらに,NMCDは,図3で示す2種類の維持力の発現機序4のうち,図3bのpush typeの発現機序になる.つまり,Ⅰバークラスプやローチクラスプのように,インフラバルジクラスプと同様の維持力の発現を示す.また,維持力は,歯頸部歯肉の形態とも関係しており,図4のように歯槽骨の幅が大きい症例では,クラスプが歯面に接する角度が90°に近くなり,外しにくくなる. また,レジンクラスプは義歯の沈下に対して広がりやすく,レストへ過剰な負荷がかかり,位置がずれやすい.したがって,レストの強度に注意し,遊離端義歯では欠損側へ移動しないように設計上の配慮が必要である(図5).the Quintessence. Vol.41 No.9/2022—205357NMCDは従来のメタルクラスプデンチャー(MCD)とどこが違うのか?forbeginnersQ1 日本補綴歯科学会のポジションペーパー1では,NMCDを「義歯の維持部を義歯床用の樹脂を用いて製作したパーシャルデンチャーの総称」と定義している.したがって,NMCDには,従来あるまったくメタルを使用しないフレキシブルデンチャーだけでなく,レストや連結子にメタルを使用した剛性のある義歯も含まれる(図1).このポジションペーパーでは,これら2種類のNMCDを使い分けるように謳っている. すなわち,剛性のないNMCDは金属アレルギーなど特別な症例を除いて暫間的な使用にとどめ,最終義歯としての使用は推奨していない.一方,患者が審美領域にメタルクラスプが走行することを受け入れられない場合は,剛性のあるNMCDにすべきであるとしている. MCDとNMCDの違いを挙げると,その設計において注意しなければならない点がみえてくる.図2は,エーカースクラスプとレジンクラスプの維持力発現機序の違いを示している.エーカースクラスプ(MCDの場合)はクラスプ先端で最大維持力が発揮されるが,レジンクラスプ(NMCDの場合)ではクラスプ肩部の歯頸部寄りで最大維持力が発揮される3.したがって,維持力が強すぎる場合の調整部位が
元のページ ../index.html#4