ザ・クインテッセンス 2022年9月号
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Keep it simple stupid!西 真紀子NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長・歯科医師連絡先:psap@honto-no-yobou.jpMakiko Nishiキーワード:メインテナンスプログラム,平均喪失歯数 一般歯科医院におけるメインテナンスプログラムの長期アウトカムを最初に検証・公表したのは,スウェーデン・カールスタッド市駅近くにある故・ペール・アクセルソン先生の歯科医院だった(図1). そのプロジェクトは1973年に始まり,6年後1,15年後2,30年後3のアウトカムが発表されている.30年間の結果をまとめた論文は,The GABA International Research Prize for the most important scientific paper on Preventive Dentistry publishes during 2004-2005という,その2年間に出版された予防歯科分野の論文でもっとも優れたものに与えられる賞を受賞した4.現在までに1,000以上の論文に引用されているようだ(図2). この,アクセルソン先生らの臨床データのなかで,検証開始時にメインテナンス群に割り当てられた患者のうち,30年後に残ったのは257人だった.彼らの喪失歯数の平均は,ベースライン時の年齢が20~35歳の群で0.4本,36~50歳の群で0.7本,51~65歳の群で1.8本だった(図3). 筆者は,これらの数値はメインテナンスプログラムとして達成すべき値であり,今から50年近く前に始まったメインテナンスプログラムを,現代の歯科医師は当然追い越せる可能性があるだろうと考えている. 臨床データでのフォローが終了した(2003年)後ですら歯科医療技術の進歩はめざましく,さらに歯科医学研究で得られた知見も膨大で,以前はできなかったことが可能になり,知らなかったことが解明された.それなのに,このアクセルソン先生らの先行研究に現代の歯科医師が追いつき,追い越せないならば,臨床現場において何が障害になっているのかをみずから考察すべきである.そのためにも,自院の臨床データを見る価値があるだろう5. 本稿の目的は,日本の一般歯科医院がメインテナンスプログラムのアウトカムを自院で検証することを促し,その方法例を示すことである.To Evaluate the Outcomes of the Maintenance Program106the Quintessence. Vol.41 No.9/2022—21021.予防歯科先進国に追いつき追い越せ!メインテナンスプログラムのアウトカムを検証する

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