ザ・クインテッセンス 2022年10月号
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?abる3.吸収は歯肉上皮付着部下のセメント質から始まり4,その初期では歯根膜,セメント質,象牙質のみが侵されるが,吸収が進行し,歯根内部へ拡大すると歯髄を取り囲むように円周方向へ進行するだけでなく,歯冠側や根尖側方向へと三次元的に拡大していく5~7(図2,3). ICRの歯種ごとの発生率は,Heithersay(1999年)8とMavridouら(2017年)9の報告によると上顎中切歯(29.18%,28.78%)がもっとも多く観察されており,上顎犬歯(13.23%,13.65%),上顎側切歯(8.95%,8.90%),下顎第一大臼歯(10.12%,8.31%),上顎第一大臼歯(7.78%,7.12%)と続き(図4),性差は観察されないようである(図5)8,9.the Quintessence. Vol.41 No.10/2022—2293511)ICRの概要 歯根吸収の原因としては,外傷の既往や矯正治療,髄腔内漂白などによる歯髄組織・歯周組織,またその両方の慢性的な炎症などが報告されており1,2,主に患者は無症状で定期検診時のエックス線検査などで発見されることも少なくない. この外部吸収のうち,Invasive Cervical Resorp-tion(ICR,近年ではExternal Cervical Resorption:ECRと表記されることも多い)は歯頸部から始まる侵襲性の外部吸収とされ,歯内療法患者における10年間の観察期間中での発生率は2.3%程度と報告されてい図1a,b パノラマエックス線写真と下顎前歯の口腔内エックス線写真.下顎右側中切歯の歯根内にエックス線透過像と不透過像が混在し,歯頸部にもエックス線透過像が確認できる.1.InvasiveCervicalResorption(ICR)とはQuestionこの症例の診断名と治療法,思い浮かびますか?

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