ザ・クインテッセンス 2022年10月号
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法ABC②①②①②①the Quintessence. Vol.41 No.10/2022—2317セメント-エナメル境歯肉頂ポケット底(長い)上皮性付着上皮性付着上皮性付着(再生された)結合組織性付着751).このうち,「長い上皮性の付着」と呼ばれ,炎症はないが歯周ポケットとして再発する可能性があり「守り」が必要な状態(図1A)や,切除的に歯周ポケットが再発する余地をなくし,歯周組織としては「ニュートラルな状態」(図1B)は,いずれも臨床的な歯冠歯根比(図2)が悪化した状態といえる. 一方,もともと歯周組織の破壊が軽度であった歯や,歯周組織再生療法によって結合組織性付着を回復した状態(図1C)は,歯冠歯根比が改善された状態である. 義歯支台歯の生存率に関連深い因子を解析した調査(Literature Review ❶)1で,歯冠歯根比は生存率を予測するうえでの重要な指標であることが示されている.ある調査では,歯冠歯根比が1.26未満の支台歯の7年生存率は75%以上であるのに対して,1.26以上の支台歯は50%未満であることが報告されている2. 二次固定を利用するためには,後述するように義歯設計を慎重に行うことが求められる.適切に設計2)動揺度の観点 歯周治療を行う過程では,動揺を認める残存歯に対して,原因を除去したうえでの暫間固定は歯周組織の治癒にとって有効であるが,たとえば,両隣在歯が欠損した孤立歯では強固な暫間固定は難しい(図3). 動揺度(図4)は,歯の予後予測において重要な指標であり3,歯周治療後の最終補綴治療に際して動揺歯が残存している場合には,固定性補綴装置(連結冠やブリッジ)での固定(一次固定,図5a),あるいは部分床義歯を装着することによる固定(二次固定,図5b)での保護が検討される.3)歯周組織が喪失し弱体化した支台歯を保護する条件◆ 歯周炎罹患歯における歯周治療後の治癒形態◆ 臨床的歯冠歯根比とその評価方図1 歯周炎罹患歯における歯周治療後の治癒形態.A:長い上皮性の付着であり,歯周ポケットの再発を予防する「守り」が必要な状態.B:切除的に歯周ポケットが再発する余地をなくし,歯周組織としてはニュートラルな状態.C:再生治療という「攻め」によって歯の保存予後を改善した状態.図2a図2b図2c図2a~c a:臨床的歯冠歯根比.歯槽骨頂から根尖までの距離(①)に対する,歯冠切縁から歯槽骨頂までの距離(②)の比を指す.デンタルエックス線写真上での臨床的歯冠歯根比の評価(b,c).b:歯冠歯根比が小さい(状態が良い)支台歯.c:歯冠歯根比が大きい(状態が悪い)支台歯.

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