50年にわたり臨床に携わってきた著者が,全顎矯正と部分矯正の診断および治療法を解説した書籍『全顎矯正と部分矯正へのアプローチ 非抜歯治療と抜歯治療の選択基準』.本稿では,“誌上立ち読み”企画として,本書のCASE8から一部を抜粋して本誌読者向けに再構成しています.(編集部)Skeletal Mandibular Protrusion and Non-Extraction of Teeth with Tongue Habits and Temporomandibular Joint Disorders:To Avoid Mandibular One-Jaw Extraction and Surgical Orthodontic Treatment104the Quintessence. Vol.41 No.12/2022—2778 反対咬合は乳歯列期,交換期,永久歯列期など,どの時期に発症したかによって,歯性,機能性,骨格性などに分けられる.また,発症から長期間になるほど,歯性から骨格性へ徐々に変化していくと考える. 反対咬合は骨格性下顎前突ともいわれている.骨格性下顎前突は非抜歯で矯正治療を行うもの1と,抜歯して矯正治療を行うもの2に分けられるが,筆者の経験では非抜歯治療の方が多く,抜歯治療に比べて咬合や審美性,安定性が良いと思われる.また,成人の骨格性下顎前突は,矯正治療のみで行うものと外科的矯正治療(顎変形症)により行うもの3に分けられる. ここで紹介する症例は,セファロ分析の骨格系(SNB,ANB,Facial a.,Y-axis,FMAなど)と歯系(U1SN)がI.S.D(標準偏差)を外れて下顎の前突傾向を示していた.また,模型分析ではoverjet,overbiteや咬合患者:26歳10か月(1994年8月初診)主訴:上の歯と下の歯が逆で,うまく噛めない.検査所見・ 下口唇とオトガイ部が突出しており,骨格性下顎状態が下顎の前突傾向を示していた.通常であれば,下顎片顎抜歯や外科的矯正治療の範疇であると思われるが,患者の非外科的治療の希望と顎関節症を考慮して非抜歯矯正治療のみで行うことに決定した.下顎片顎抜歯や外科的矯正治療の症例をどのようにして非抜歯矯正治療のみで行ったのか,興味ある知見を得たので報告したい.前突の顔貌をしている(図1).・ Overjet-6.5mm,overbite5mmで,上下の前歯に叢生が認められる(図2).・ 右側の顎関節部に相反性クリック音と疼痛があり,右側の側頭筋や咬筋に圧痛が認められた.症状より右側顎関節のⅢa(復位性関節円板前方転位)が疑はじめに症例提示特 集 4舌癖と顎関節症をともなう骨格性下顎前突・非抜歯症例下顎片顎抜歯や外科的矯正治療を回避するために
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