ザ・クインテッセンス 2023年1月号
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Shisei Kubo78長崎大学非常勤講師連絡先:〒852‐8102 長崎県長崎市坂本1丁目7‐1Strategies for Managing Root Caries: Tailor-made Recalls based on Caries Risk久保至誠 少子高齢化の進行により,わが国は2007年に超高齢社会に突入し,令和3年版高齢社会白書によれば,2020年の高齢化率28.8%であり,今後も上昇を続け,15年後には3人に1人になると推計されている1.同様に,歯科医院の患者に占める高齢者の割合も過去30年間に急速に増加し,現在は40%を超えている2.また,2008年をピークに減少に転じた総人口の減少にともなって,歯科受診患者総数も数年前より減少し始めているものの,高齢者の患者は2045年頃まではわずかながら増加していくと予想されている(図1)3.1989年に始まった8020運動は,精力的な口腔保健啓発活動とフッ化物の応用および歯周病治療の進展によって,開始当時7%程度であった達成率は2016年度には51.2%まで急増し,大きな成果を上げている4. 社会の高齢化にともなう疾病構造の変化,医療技術の進歩や歯科医療をとりまく環境も大きく変わり,歯科医療に対する国民のニーズも著しく変化している.今後の重要な課題の1つとして,増加している根面う蝕への対応が挙げられ,根面う蝕の予防ならびに根面う蝕への対処法の確立が急務となっている.口腔のセルフケアができない認知症患者や要介護者,唾液腺障害や内服薬の副作用による口腔乾燥症の高齢有歯顎者などで全顎的に根面う蝕が多発し,短期間で歯冠破折と咬合支持の喪失などの口腔崩壊を招き,その対応が在宅や老人施設での訪問歯科診療で解決すべき深刻な問題になっていることは承知している.しかし,本稿では,セルフケアや通院ができる自立高齢者を中心に,筆者が行ってきた定期管理を前提とした対処法を紹介したい.キーワード: 根面う蝕,長期マネジメント, う蝕リスク(う蝕活動性),時間軸the Quintessence. Vol.42 No.1/2023—0078 特 集 3はじめに時間軸   で診る根面う蝕の長期マネジメント戦略

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