ザ・クインテッセンス 2023年1月号
7/9

3演者論202文コーディネーター:辺見浩一*1/プレゼンター:依田慶太*2*1東京都開業 恵比寿ヘンミデンタルオフィス代表連絡先:〒150‐0021 東京都渋谷区恵比寿西2‐2‐8‐4F*2東京都勤務 杏雲ビル歯科 深在性う蝕に対する生活歯髄療法は,術前の歯髄の状態によってさまざまな治療選択を行う必要があり,その選択は術者の考えに大きく依存する必要がある,まだエビデンスに乏しい治療分野である. 歯髄を残すことの価値が大きいことは言うまでもないが,筆者は深在性う蝕に対する歯髄保存治療について,まだまだ考えなければいけないことが多くあると感じている.それは,「本当にその歯髄は残せる歯髄なのか?」「長期的に見た時に,残すことが本当にその歯にとって有益な治療になりうるのか?」などである.歯髄診断の結果があいまいであることは,すでに多くの歯科医師の知るところであるが,だからといって歯髄保存治療があいまいな治療でよいわけではない. 筆者は,このような背景から深在性う蝕の生活歯髄療法について,2021年11月「深在性う蝕の生活歯髄療法ワークショップ」を開催した.深在性う蝕に対して,「歯髄を残した症例」「抜髄した症例」など,経過の良好,不良にかかわらず,治療の結果がある症例を多くの歯科医師にご報告いただいた.そこで多岐にわたる症例を疑似体験し,多くの歯科医師とディスカッションすることにより,知識を深めることができた. 本連載では,そのワークショップの形式に則り,深在性う蝕の治療を行った症例を供覧しながら,ここで再度,生活歯髄療法への理解を深めていきたいと考えている. 第1回の症例(依田)は,間接覆髄後の経過不良を再度アプローチすることでリカバリーを行った症例である.われわれ歯科医師は,深在性う蝕を除去する際に,どのくらい先に歯髄があるのか正確に把握することはできない. う蝕除去自体もその基準はあいまいであり,各歯科医師に依存する状況である.そのため,「う蝕除去の結果,菲薄になった象牙質をどのように扱うのか」について悩まされることは少なくない.本症例(依田)では,「どこまで感染象牙質を除去するのか」,そして「露髄というものをどう捉えるのか」を再考することができた.the Quintessence. Vol.42 No.1/2023—0103103新連載臨床ケースから学ぶ!深在性う蝕に対する生活歯髄療法の治療選択第1回不顕性露髄への対応を考える連載にあたって(辺見)歯髄保存後の不良経過に対峙したら

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る