3演者論202文Biological Basis and Clinical Procedures on Vital Pulp Therapy44東京都開業 瀧本歯科医院/米国歯内療法専門医連絡先:〒181‐0013 東京都三鷹市下連雀3‐36‐1‐3FKoyo Takimoto キーワード:歯髄保存療法,vital pulp therapy,pulp biologythe Quintessence. Vol.42 No.2/2023—0290 近年,国内外を問わず,歯髄保存療法(VPT:vital pulp therapy)に対する関心が高まっている.本誌においても2020年以降,歯髄保存に関連する記事が複数掲載されている.国外に目を向けると,2019年にはヨーロッパ歯内療法学会(ESE)1から,2021年には米国歯内療法学会(AAE)2から,それぞれVPTに関するポジションステートメントが発表された.また,乳歯と根未完成永久歯の歯髄保存療法については,米国小児歯科学会(AAPD)より“reference man-ual”という形で2020年度版3が公表されている. 歯髄組織の保存を試みるこの治療法の歴史自体は古いが,近年ではmineral trioxide aggregate(MTA)に代表されるケイ酸カルシウム系材料の登場や実体顕微鏡を用いた拡大視野下での治療の普及など,術式が従来の方法から進歩してきた.これにより,これまで抜髄適応とされてきた根完成歯の不可逆性歯髄炎への臨床報告の増加など,適応症例が拡大するなどの変化も起きており,上記のポジションステートメントにもその変化が反映されている. その一方で,“歯髄診断の困難さ”と,それにともなう“可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎の線引きの不明確さ”,“長期予後の予測の困難さ”など,現在も議論となるような従来から変わらない問題も存在する. 本稿の目的は,VPTの生物学的背景,上記のポジションステートメントの解釈を含めた近年の報告,各種材料の応用による臨床例などを通じて,歯内療法の原理,原則をふまえたうえで,2023年現在のVPTの現状について概説を行う.瀧本晃陽はじめに特 集 1基礎編:用語の定義と歯髄のバイオロジー生物学的背景に基づいたVital Pulp Therapyの実際
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