◆一般的な新義歯装着時の調整手順と調整方法1支台装置義歯床粘膜面咬合接触ている間は,必ず支台歯の舌側面に把持腕あるいは義歯床,小連結子など,頬側からの側方力に拮抗する構成要素が適合していなくてはならない. 一方,「受動性」とは,「義歯が定位置に装着された際に,支台歯が支台装置からいかなる側方力も受けない(passive fittingが得られている)状態」を指す.レシプロケーションと同様に,義歯装着時には支台歯の頬(舌)側に設置されたクラスプ(またはその他の構成要素)が同時に適合している必要がある. レシプロケーションならびに受動性は,部分床義歯が支台歯に為害作用を及ぼさないために基本とな義歯床研磨面the Quintessence. Vol.42 No.2/2023—031367◦隣接面板を含む小連結子,レスト,把持腕の内面が義歯装着時に支台歯に対して側方力を与えないように,適合の強すぎる部位を調整する(受動性の確保)◦ワイヤークラスプは製作過程で変形している可能性があるため,必要に応じて維持力の調整を行う◦骨隆起,鋭利な骨縁はリリーフする◦フラビーガムなど支持能力のない顎堤は圧迫されないよう義歯床の適合を緩める◦支持域(顎堤頂,口蓋,上顎結節の水平面,頬◦支持域以外(顎堤側面,上顎結節側面,レトロモラーパッド,など)は支持域よりやや弱めに義歯床と接触するように調整する1)支台歯の許容範囲を考慮した義歯調整とは? 一般的な新義歯の調整手順,方法について図1に示す.第一に,必要に応じて支台装置の調整を行うが,歯周病患者において重要な点は「レシプロケーション(図2)」と「受動性(図3)」の確保である.棚)は義歯床としっかり接触させる図1 一般的な新義歯装着時の調整手順と調整方法.A.支台装置の調整 「レシプロケーション」とは「拮抗作用」とも呼ばれる.着脱時に頬側維持腕が支台歯の最大豊隆部を通過する際に,頬側維持腕が支台歯を舌側方向に押し倒す力が生じる.このため,維持腕が歯面と接触し◦咬頭嵌合位(あるいは中心咬合位)で臼歯部が均等接触し,前歯部はわずかに緩い咬合接触を付与する◦偏心運動時の咬合様式は,症例によって,犬歯誘導,グループファンクション,両側性平衡咬合,リンガライズドオクルージョンを付与する(第3回を参照)◦可動域(小帯,翼突下顎ヒダ,など)に義歯床が干渉しないように必要に応じて調整する◦支台歯周辺の義歯床が過長,過厚である場合には,食渣の流れを妨げないように調整する3-123-21.最終義歯装着時から調整完了までの注意点
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