ザ・クインテッセンス 2023年2月号
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3演者論202文リエントリーあり・ ステップワイズ 図1 選択的う蝕除去によって露髄を回避する治療は,ESEのポジションペーパーで用語が整理された.エキスカベーション・ 非侵襲性歯髄覆罩 (AIPC:Atraumatic Indirect Pulp Capping)・歯髄温存療法・ 暫間的関節覆髄(IPC:Indirect pulp capping)リエントリーなし・シールドレストレーション・Partial caries removalステップワイズエキスカベーション(本稿では2回法とする)Selective carious removal in one stage(本稿では1回法とする)コーディネーター:辺見浩一*1/プレゼンター:宇土武典*2*1東京都開業 恵比寿ヘンミデンタルオフィス代表連絡先:〒150‐0021 東京都渋谷区恵比寿西2‐2‐8‐4F*2静岡県開業 宇土歯科医院 深在性う蝕の生活歯髄療法におけるう蝕除去法は,現在2つの方法に分類されている1.1つは,安全域であるう窩外縁部のう蝕を完全に除去し,中心部の露髄のリスクのある部位を残し,露髄を避ける「選択的う蝕除去」.もう1つは,う窩内のう蝕すべての除去を行う「非選択的う蝕除去」である. 前者の選択的う蝕除去は,残したう蝕を封鎖することで,進行を停止させる方法である.残したう蝕を封鎖し,6~12か月の経過観察後,再度う蝕の完全除去を行うステップワイズエキスカベーション(以下,2回法)と,残したまま最終的な封鎖を行い,最終修復を行うselective carious removal in one stage(以下,1回法)に分かれる(図1). このような段階的なう蝕除去によって露髄を回避する方法は,日本歯科保存学会のう蝕治療ガイドラインでも,「深在性う蝕に対して歯髄に対する侵襲の低い方法」として推奨されている2.適応は術前に歯髄の症状が軽微な歯であり,症状の強い歯に行うと悪化する可能性がある3ため,避けるべきである.一方で,この方法は感染を残すため,長期的には健全な歯髄を残せない可能性を示唆する報告もあり,米国歯内療法学会のポジションステートメントでは,選択的う蝕除去は採用されておらず4,2つの大きな学会の相違点となっている. 本稿では,1回法を行った後の経過観察中に変化のあったプレゼンターの貴重な症例を基に,臨床における1回法の適応と注意点を考察したい.the Quintessence. Vol.42 No.2/2023—0361115選択的う蝕除去により露髄の可能性がある時に,露髄を回避する連載臨床ケースから学ぶ!深在性う蝕に対する生活歯髄療法の治療選択第2回Selective carious removal in one stageの適応症を考えるはじめに(辺見)

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