ザ・クインテッセンス 2023年4月号
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1図1 Garretsonのリトラクター.この装置は,6インチほどの長さの2本の鋼鉄の帯からなり,その一端には外耳に入れるための突起があり,後頭部を覆う革紐はイヤーピースのずれ落ちを防止するために取り付けられている.イヤーピースを所定の位置に装着し,ストラップを締めた後,下顎パッドを下顎にしっかり密着させる.患者に開閉口を繰り返し命じ,下顎を後方に引くと下顎パッドが上方に移動し,下顎頭が関節窩に静止したことが確認できる.この位置では,患者は快適に開閉口することができるが,下顎をより前方に突出しようとすると,耳介の抵抗により前方への動きは防止される(図は参考文献4より引用).図2 GysiのGo-A口外描記装置(図は参考文献9より引用).(2) 中心位を規制するのは,靭帯か,それとも筋肉か(ligament position or muscular position)?(3) 中心位の誘導は,術者誘導か,それとも患者主ら靭帯によりコントロールされていると考えられていた. このように,歴史的に中心位は機能的な咬合位ではないという考え方がある.そこで本稿では,この考え方に対して,(1) 中心位は,緊張していない状態か,それとも緊張している状態か(unstrained position or strained position)?導か(passive guidance or active guidance)?という項目で解説する. Gysiは,Go-A口外描記装置を開発し,講習会などをとおして一般に紹介し,普及させている.Gysiの装置は,上顎咬合床の前歯部唇面に弾筆を付着させ,下顎咬合床に記録用のプレートを付着させるものであり,咬合高径を咬合堤により維持するものである(図2)9.そのため,偏心運動時において記録床の安定を保つことが困難となる. また,Gysiは,「Go-Aのアペックスに描記針が位置する時,下顎は中心位にある」,「下顎が下顎最後退位にある時,この位置から下顎は側方運動を行うことが可能であり,そのアペックスは鋭角となる」,「Go-Aの頂点であるアペックスが鋭角ではなく鈍角となる場合は,中心位ではない」と述べている10,42. Trapozzanoも「アペックスが鋭角ではなく,丸みを帯びる場合は,技術的要因(基礎床の不安定,遠心部における上下顎基礎床の干渉,圧力の不均一化など),患者の側方運動に対する無理解,患者の習慣,片側および両側の下顎頭の後部組織に何かが少し詰まったことにより生じる可能性があり,このような場合には,患者と術者がある程度粘り強く取り組むことで,明確な頂点をもつアペックスが得られる.アペックスに関し,患者自身の筋力による生理的位置(unstrained position)であり,強制位(strained position)ではない」と述べている11. 上記のGysiの中心位に対する考え方に,Hallらのグループは「ゴシックのアペックスは“unstrained the Quintessence. Vol.42 No.4/2023—07877721. 中心位は,緊張していない状態か,それとも緊張している状態か(unstrained or strained position)?

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