3演者論202文 歯を欠損した場合にはいくつかの補綴方法が存在する.考えうる補綴方法のうち,パーシャルデンチャーやブリッジは残存歯に少なからず不可逆的な侵襲を与えることは周知の事実である.インプラント治療はその点において優れている.しかし,治療の再介入の難しさや,近年取り沙汰されているクラニオフェイシャルグロース(lifelong craniofacial growth:成人後に起こる頭蓋顔面の成長.インプラント補綴装置と天然歯列との不調和の原因となる)のことを考慮すると,インプラント治療の適応はできるかぎり先送りすることが,のちのトラブルを最小限に抑制する解決策の1つとなると筆者は考えている. 本稿で取り上げる自家歯牙移植は,ドナーとなる移植歯が存在するかどうかの問題はあるものの,前述の問題を解消する非常に有効な治療法である.本術式は,自家歯牙移植のなかでも歯槽頂から上顎洞底を挙上し移植床を形成するものであり,筆者が経験した自家歯牙移植のなかでは良好な結果が得られているものが多く,非常に有用性を感じている. 自家歯牙移植を可能にしているのは,歯根表面に存在する歯根膜である.歯根膜内に存在するといわれる未分化間葉細胞から線維芽細胞,骨芽細胞,セメント芽細胞が分化し,歯根膜線維,歯槽骨,セメ溝上宗久Autotransplantation of Tooth with Crestal Sinus Floor Elevation94福岡県開業 溝上歯科学研都市クリニック連絡先:〒819‐0366 福岡県福岡市西区横浜3‐34‐7Tokihisa Mizokamiキーワード:自家歯牙移植,上顎洞底挙上,クレスタルアプローチthe Quintessence. Vol.42 No.4/2023—0804特 集 3はじめに1.自家歯牙移植の基礎イラストと写真で解説!上顎洞底を挙上して行う自家歯牙移植術
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