ザ・クインテッセンス 2023年5月号
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3演者論202文 前編の基礎編では,歯髄保存療法の定義と分類,生物学的背景および欧米学会の現在のポジションステートメントについて概説を行った.後編にあたる本稿では,前編で論じた内容をふまえたうえで歯髄 歯髄保存療法(以下,VPT)は,文字通り傷害を受けた生活歯髄を保存する治療法である1ことから,生活歯髄に対する何らかの傷害が生じていることがその適応となる.壊死歯髄と診断される場合には,当然だがVPTの適応にはならない.VPTが適応となる原因とその治療方針の決定について以下に述べる.保存療法の実際の術式について症例提示を交えつつ,臨床のポイントについて図1に示した一般的な歯髄保存療法の流れに沿って,それぞれについて順に解説を行う.1)症例の選択①歯の外傷に対するVPT 露髄をともなう複雑性歯冠破折においてはVPTが第一選択となり2,部分断髄は高い成功率が報告されている3,4.従来はう蝕における露髄時への対応と同様に水酸化カルシウムが使用されており,現在ではMTA(mineral trioxide aggregate)に代表されるケ瀧本晃陽Biological Basis and Clinical Procedures on Vital Pulp Therapy72東京都開業 瀧本歯科医院/米国歯内療法専門医連絡先:〒181‐0013 東京都三鷹市下連雀3‐36‐1‐3FKoyo Takimoto キーワード:歯髄保存療法,vital pulp therapy,pulp biologythe Quintessence. Vol.42 No.5/2023—1032はじめに1.VPTとは臨床編:歯髄保存療法の臨床術式と予後特 集 2生物学的背景に基づいたVital Pulp Therapyの実際

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