ザ・クインテッセンス 2023年5月号
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⿟一般的な歯髄保存療法の流れイ酸カルシウム系材料も広く使用されるようになっているが,外傷による露髄に対して両者の成功率には差がないことが報告されている5.この場合,歯の外傷は審美的領域である上顎前歯部に頻発することから,歯冠の変色を生じさせない覆髄材料を選択する6ことが重要である.②支台歯形成,窩洞形成中の露髄に対するVPT 歯冠修復のための支台歯形成中に偶発的に露髄する可能性があり,生理学的に歯髄腔の容積が大きい比較的若い成人および下顎前歯部において露髄の頻度が多いことが報告されている7.形成中に偶発的な露髄が生じた場合は歯髄保存を試みる8が,歯髄保存が困難である場合や早期に歯髄壊死に至った場合には根管治療が必要になる可能性がある9.図1 一般的な歯髄保存療法の流れ.*1本稿においては「深いう蝕」と「きわめて深いう蝕」という用語を以下のヨーロッパ歯内療法学会(ESE)の定義に基づいて使用する.a.深いう蝕(deep caries):象牙質の内側1/4に達するう蝕で,エックス線的にう蝕病変と歯髄腔の間に一層のエックス線不透過性の層を認める.b.きわめて深いう蝕(extremely deep caries):象牙質の全層を貫通するう蝕で,エックス線的にう蝕と歯髄腔が接している.the Quintessence. Vol.42 No.5/2023—103373診査・診断・治療方針の決定患者への説明局所麻酔ラバーダムう窩の開拡・う蝕の除去露髄の確認・露髄面の処理覆髄材料の貼付歯冠部の仮封・歯冠修復経過観察③う蝕による露髄に対するVPT 歯髄に近接する深いう蝕を有する歯に対していかに保存的に治療を行うかを考える機会は,日常診療においても多いことだろう.また,深いう蝕にともなって強い自発痛や冷水痛などの誘発痛を主訴に歯科医院を受診する場合も多いことから,患者の症状の軽減を得ることと同時に歯髄の保存の可否を判断する機会はきわめて多い.このような露髄の可能性のある深いう蝕*1に対してどのようにアプローチするかに関しては,ヨーロッパ歯内療法学会よりポ

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