3演者論202文 本連載ではこれまで,深在性う蝕の生活歯髄療法において,さまざまな治療選択を行った症例を紹介し,目の前に対峙した歯髄にとって最適な治療選択を行うための考察をしてきた.歯髄保存は断髄とMTAの覆髄材としての適応により,従来よりも保存の可能性は高まった.その一方で,どんな歯髄でも保存すればよいわけではなく,患者の年齢や患歯の状態などを考慮し,その歯にとって本当に歯髄保存が必要なのかを熟慮することが重要であり,対峙している歯髄の保存の重要度を考えることが必要である.たとえば,若年者の歯根未完成歯と高齢者の歯髄閉塞を起こした歯の歯髄保存の重要度は同列ではない. 歯髄を残すことは価値のあることである.だからこそ,適応症と考えられる症例の歯髄は残し,健全本稿で提示する3症例は治療時期がかなり前になるため,必ずしも本ディシジョンツリーに当てはまらない可能性があるが,すべて直接覆髄を行った症例である.辺見浩一*/吉岡隆知*1*東京都開業 恵比寿ヘンミデンタルオフィス代表連絡先:〒150‐0021 東京都渋谷区恵比寿西2‐2‐8‐4F*1東京都開業 吉岡デンタルオフィスthe Quintessence. Vol.42 No.5/2023—1087127デンタル口腔内所見歯髄の生死の診断歯髄に近接した深い象牙質う蝕(Deep caries)臨床症状歯髄の診断可逆性歯髄炎症状なしもしくは軽度生活不可逆性歯髄炎可逆性歯髄炎中等度〜強い症状あり不可逆性歯髄炎失活う蝕除去法の選択選択的う蝕除去非選択的う蝕除去無症候性非選択的う蝕除去のみ症候性歯髄壊死露髄の有無1回法:Selective carious removal in one stage2回法:ステップワイズエキスカベーション間接覆髄Class2 直接覆髄部分断髄歯頸部断髄抜髄露髄させない露髄なし露髄抜髄間接覆髄露髄なしClass2 直接覆髄部分断髄歯頸部断髄抜髄露髄歯頸部断髄抜髄感染根管治療治療法の選択本稿の症例はClass2ではなく,「直接覆髄」はじめに(辺見)連載臨床ケースから学ぶ!深在性う蝕に対する生活歯髄療法の治療選択第5回(最終回)歯髄保存の良好な長期予後を目指して
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