ザ・クインテッセンス 2023年6月号
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3演者論202文 2000年台初頭にFDIが提唱したMI(Minimal Inter-vention)のコンセプトは,卒後間もない大学院生の筆者に衝撃を与えた.しっかりと削り,再修復のない治療を目指すことが是とされた時代から,最小限の介入や再介入を前提とした考え方に歯科界が大きく方向転換する瞬間だった.そしてこの潮流のなかで,もっとも注目された治療手法がコンポジットレジンによるダイレクトボンディングだろう.現在に至るまでその適応の拡大には目を見張るものがある. しかし,初期段階の介入がダイレクトボンディングだったとしても,再介入の際に間接法へ移行することや,実質欠損の範囲や審美性への要求度を考慮して,最初から間接法を選択することも多いだろう. ところが,間接修復となった途端に“しっかりとした(多くの歯質を削除する)形成”が正解と評価されるように感じる.脱離を防ぎ,審美性を追求するなかでは,しっかりとした形成は当然とされてきたが,はたしてそうなのだろうか? 修復・補綴材料や接着技術が進歩した現在なら,間接修復においても歯質削除量を少なくした補綴手法が成立するのではないか. MIのコンセプトから約20年を経て,コンベンショナルな支台歯形成デザインの侵襲を減らす取り組みが報告され,中長期の良好な結果も得られている.このような取り組みはときにチャレンジングに見えるかもしれないが,多くの局面から侵襲を減らす取り組みを続けたことで,支台歯形成は新時代に突入した. 本稿では,“MI=短い再治療サイクル”ではない佐藤洋平神奈川県開業 歯科佐藤 横浜鶴見*/鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座代表連絡先:*〒230‐0051 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央1‐10‐3‐B101Yohei Satoキーワード: 支台歯形成,MI,オクルーザルベニア,バーティカルプレパレーション,ラミネートベニア,接着ブリッジEvolving Tooth Preparation in the Era of Metal Less Restoration52the Quintessence. Vol.42 No.6/2023—1238特 集 1メタルレス時代の進化する支台歯形成―その意義と実際―はじめに

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