ザ・クインテッセンス 2023年6月号
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すいことや,咬合力やそのベクトルが破折を比較的引き起こしにくいと考えられたことがあるのだろう.また,審美領域であるために金属修復が選択されにくいので,全部被覆 or CRという,ある種,“究極の選択”を強いられ,CRが選択されることも多かったのかもしれない. 一方で臼歯部,とくに大臼歯部においては強い咬合力を負担するため,失活歯は歯根破折を生じやすく,それゆえに全部被覆にするという考えがあたりまえであった.なかには咬合面の被覆は行うが,歯肉縁までは形成しないで咬合面アンレーを選択することもあったが,修復・補綴装置の破折や脱離の観点から金属修復となり,審美性を犠牲にすることを強いられた. さらにこのことは,修復材料とその加工法,および接着材料とそのシステムの信頼性が不足しているthe Quintessence. Vol.42 No.6/2023—1239531)臼歯部修復治療における全部被覆による支台歯形成からの変革支台歯形成の進化以前と以後“進化した間接補綴”を解説し,支台歯形成を見直す意義と可能性を見出してみたい. 「失活した臼歯はクラウンにする」,筆者が学生の頃(1990年代後半)には,このことを疑いもしなかった.一方で,前歯部においては早い段階から根管治療後にコンポジットレジン(以下CR)充填で治療を終了することが行われていた. このように治療法が前歯部と臼歯部で異なるのは,前歯部については根管治療に至る原因となるう蝕が生じたとしてもある程度強度を有する歯質が残りや以前以後1.臼歯部クラウン形成の進化型“オクルーザルベニア”

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