ザ・クインテッセンス 2023年6月号
8/9

3演者論202文吉野宏幸*/土岡弘明*1/工藤 求*2*埼玉県開業 吉野歯科医院連絡先:〒332‐0016 埼玉県川口市幸町3‐8‐46‐202A*1千葉県開業 土岡歯科医院連絡先:〒272‐0023 千葉県市川市南八幡4‐7‐3‐2F*2東京都開業 プリズムタワー工藤歯科連絡先:〒153‐0044 東京都目黒区大橋1‐10‐1‐1F 本連載が今回で2回目になる.2000年代初頭の数年間,東京医科歯科大学歯周病学分野でともに学んだ筆者ら3名が,当時から取り組んでいた包括的歯周治療についてエビデンスと症例を交えながら隔月の連載を予定している. 4月号では,土岡が歯周-矯正治療に関する概論を解説し,歯周病による病的な歯の移動(pathologic tooth migration,PTM)について詳細を述べた1.そして,症例に関しては歯周外科を行わず,歯周基本治療のみで歯周炎をコントロールして歯周-矯正治療を行った2症例を提示した(図12:黄色枠). 今回は筆者(吉野)が,歯周外科後に矯正歯科治療を行った症例を中心に述べたい(図12:赤色枠).前半では,歯周病患者への矯正歯科治療の効果に関して文献をレビューし,後半は歯周外科をともなう歯周-矯正治療の2症例を提示して具体的な治療法について解説する. 歯周病患者への矯正歯科治療の効果に関しては,1980年代から報告されだした.おもに上顎前歯のポケットの変化を評価した2研究3,4は,矯正歯科治療の前に初期治療しか行っていない.Eliassonらの研究3はホーレイタイプの可撤式装置で前歯の後方牽引,Artunら4の研究はブラケットによる歯体移動であった.いずれも,同一口腔内に,矯正をしていない歯をコントロールにおいた研究デザインである.結果は,骨吸収してしまう症例と,アタッチメントが獲得された症例のいずれも認められたとのことで,深いポケットが残存している状態で矯正歯科治療を行うと歯周組織の破壊が起きることを示唆している. その後1989年に,矯正歯科治療前に深いポケットには歯周外科をした報告5がされており,歯周外科を矯正歯科治療前に行っても深いポケットが残存していると骨吸収してしまい,抜歯に至ることが報告152キーワード: 歯周-矯正治療,再生療法,セファログラムthe Quintessence. Vol.42 No.6/2023—1338効果とタイミングはじめに歯周病患者への矯正歯科治療の効果~包括的歯周治療のススメ~第2回 歯周再生療法後の歯周-矯正治療のPerio OrthoSynergy

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る