神山剛史神山剛史 患者の生活背景を考慮しながらどのようにアプローチしたのかの症例提示である.治療介入のタイミングは正しかったのか,メインテナンスのポイント,今後のライフステージへ向けてどのようなことを注意していくのかを考察. 侵襲性歯周炎の特徴である歯周炎患者への抗菌療法,歯周組織再生療法と矯正歯科治療のタイミングなどについて文献的考察をしている.わかりやすくまとめてあるので,普段文献に触れる機会が少ない方にはとくにお勧めである. 「人生100年時代の到来」.昨今,この言葉をさまざまな分野で耳にする機会が多い.これは歯科治療において,患者のライフステージをより長い時間軸で考慮した長期的メインテナンスが必要になることを意味する. 現在,その患者はどのステージにいるのか,その先にどのようなステージが待っているのか.同じ口腔内の状況でも治療内容の優先順位や治療介入のタイミングが異なってくるのではないだろうか. 本企画は,日本臨床歯周病学会関東支部で,「ライフステージを考慮した歯周治療」をテーマに,若年期,中年期,高齢期,老年期・フレイル期と4つに分け,支部教育研修会においてそれぞれのステージでどのようなことを考え対応しなければいけないのかを掘り下げていく.患者の生涯にわたる歯周治療のアプローチを1つの形としてまとめるべく,『ザ・クインテッセンス』誌とのコラボ企画として,合同研修会の内容を全4回で誌上連載することとなった. 2018年のAAP(米国歯周病学会)/EFP(ヨーロッパ歯周病連盟)における新分類では,歯周炎の重症度,複雑性,分布を示す「ステージ」と,宿主応答や破壊速度を評価している「グレード」判定により,現在から将来のリスク評価ができるようになった. 若年期のライフステージでは,治療予後が長いため,できるだけ天然歯列の保全を第一に考える必要がある.不可逆的な補綴治療やインプラント治療はなるべく先送りにしたい.一方で,矯正歯科治療や歯周組織再生療法の治療優先順位は高くなり,何より生活環境改善を含めた歯周基本治療が非常に重要になってくるだろう.そして,若年期での治療介入が,今後のアドバンテージとなるか,または負の遺産となるかはわれわれ歯科医師次第であり,責任重大であることを肝に銘じるべきである. 第1回では,若年期の患者に対して生活背景を考慮しながら歯周治療をどのようにアプローチしたのか,4つの症例報告と宮本泰和先生による特別寄稿を供覧していただく.the Quintessence. Vol.42 No.8/2023—174377本稿に掲載する4つのコンテンツ!企画趣旨4つの症例報告(78ページ~)若年期の歯周病に関するQ&A(91ページ) 若年者の歯周病治療でアプローチの難しさを感じるポイントや早期発見するにはどうすれば良いのか,Q&Aで提示.日常臨床での悩みが解決できると幸いである.はじめに宮本泰和先生による特別寄稿(92ページ~) 若年者の侵襲性歯周炎に対して,矯正歯科治療と歯周組織再生療法を駆使し,天然歯列の保存に努めている長期症例は圧巻の一言である.歯周病治療の偉大なる道標となるだろう.LiteratureReviewContents
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