3演者論202文松村香織 口腔機能は「食べる」ために非常に重要であり,口腔機能が大きく低下している場合には,咬合の確立だけでは「食べる」につながらないことも多くある.そのため超高齢社会の現在においては,口腔機能を踏まえた歯科医療の提供が必須となりつつある. 口腔機能低下症は,う蝕や歯の喪失など従来の器質的な障害とは異なり,複数の口腔機能の低下による複合要因によって現れる病態である.口腔機能低下を適切に診断し,適切な管理と動機づけを行うことで,さらなる口腔機能低下の重症化を予防し,口腔機能を維持,さらに回復することが可能となる.そのためには,中年期からの口腔機能低下症の診断と管理を適切に実施する必要がある1. 本特集では,2018年に保険収載された「口腔機能低下症」について,その概念と成り立ち,検査方法や実状を解説するとともに,高齢期の義歯治療との関連についても述べたい. 日本の高齢化は急速に進行している.高齢者の数が増加しているとともに,高齢者の残存歯数も増加の一途であり,8020達成者は50%を超えた2.2011年に厚生労働省から発表された歯科治療の需要の将来予測3において,従来の歯科治療の中心にあった形態回復から機能回復へ,健常者型から高齢者型へ移行する必要性が示された(図1). その後,2013年の日本老年歯科医学会学術大会にRemovable Partial Denture Treatment and Oral Hypofunction in the Older Population82Hiroki Suzuki, Kaori Matsumura, Mikio Imai, Kazuhiko Yoshiokaキーワード: 口腔機能,高齢者,食べる,口腔機能低下症鈴木宏樹*/松村香織*1/今井実喜生*2/吉岡和彦*3*篠栗病院歯科*1八女総合病院歯科口腔外科*2九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野*3よしおか歯科こども歯科代表連絡先:*〒811‐2413 福岡県糟屋郡篠栗町大字尾仲94the Quintessence. Vol.42 No.9/2023—1998特 集 3「食べる」にこだわるために知っておきたい口腔機能低下症と義歯治療はじめに1.口腔機能低下症とは
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